梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

デジタルで変わる国土強靭化(後編)

 国交省の国土強靭化に対する取り組みの説明は、13の分野(*1)にわたって行われた。有識者からは種々の質問や意見が出たが、私自身の専門であるデジタル&データ活用についての議論を紹介しておこう。

 

 分野によって多少の差はあれ、昨日紹介したように国土交通プラットフォームが形成されていて、多くのデータが公開されている。これを利用して研究成果を挙げている研究者は少なくない。例えば気象分野では、スーパーコンピュータの導入、気象衛星の高度化もあるし、過去の災害関連デジタルデータが膨大に蓄積・公開されている。

 

 研究材料に事欠かないようになっているのだが、まだ過去のデータで利用できないかしづらいものがあるようだ。気象学の研究者から「利用しやすいように整備して欲しい」との声が上がり、担当部局から検討するとの回答があった。

 

    

 

 また災害時の情報発信について、国土地理院などでWebサイトの情報が充実してきているのはいいとして、似たようなものが複数あるとの指摘もあった。情報共有、統合と言いながら「縦割りではないか」と経済学の教授が言う。担当部局は連携していますと応えたのだが、無駄ではないかとの意見が残った。

 

 私は最後に意見を求められたので、これらの点について思うところを述べた。

 

・デジタル活用で国土強靭化というのはいいことだが、脅威は自然災害だけではない

・デジタル化を進めれば進めるほど、悪意ある攻撃にさらされやすくなる

・データのオープン化はいいことだが、悪人にも知られてしまうことがリスク

・何をオープンにして、何を(重要経済安保情報?として)守るかの判断が必要

・情報提供サイトの重複は問題かもしれないが、少なくとも2つは欲しい

・故障等で使えなくなることや、乗っ取り・改ざんのリスクもあるから

 

 と申し上げた。総合政策局からは「能登半島地震で主要道路が1本しかなく対処が遅れた。これも安価な道路2本と、主要道路1本の選択の結果だった。自然災害以外の悪意による何かにも対処すること含め、全体像を検討したい」との回答があった。デジタル技術に注目が集まってきている今、何らかの注意を惹けたとしたら良かったと思う。

 

*1:気象、水管理、都市、道路、建築、鉄道、自動車、海事、港湾、航空、地図、国土技術、施工設備