フランスの総選挙は、まだ途中ではあるがマクロン大統領の中道派の退潮は明らかになった。英国の総選挙でも、保守党の下野は既定路線としても、ポピュリストのファラージ党首率いる<リフォームUK>が存在感を示しているのが悩ましい。
私自身は21世紀になる前から「国境のないサイバー空間での経済が伸長する」から、Global & Digital 政策を推し進める活動をしてきた。ただ、あるビッグテック企業が当時言った「世界政府が必要とするものは、当社がすべて提供できる」とまでは考えていない。あくまで経済政策であり、国家の外交・国防・通貨(要するに主権)にまで立ち入るつもりなどなかった。
今改めて「主権」を考えてみると、円安で日本政府が為替介入をするのは、通貨の安定を保つという主権行為である。ところが、欧州諸国は単独ではこれができない。大国フランスでもフランがユーロに替わってしまい、主権は国を離れて欧州委員会に移っているのだ。
ファラージ氏がBrexit投票の時に訴えていた「何もかもメルケルに決められてたまるか」との主張は、誇張はあるが主権が欧州委員会(notメルケル)に奪われたことを指す。今年になって各国で起きた「農民一揆」も、欧州委員会の環境規制が農家に厳しすぎ、他国の農家が有利になっているとの不満が原因だった。
今回移民問題の議論の中で、フランス人の女性が「日本はどんな移民に来て欲しいか決められる(*1)が、欧州ではどこかの国にいったん入った移民が、移動の自由ゆえフランスにやってくる」と嘆いていた。かつてフランスは、ポルトガル・スペイン・イタリアなどから移民を少しずつ受け入れて同化させてきた。しかし今は北アフリカや中東から(異教徒が)やってきて、同化しないでコミュニティを作る。それゆえ分断が生れてしまったという。外交の一部である移民政策が、国家主権を失ったことで崩壊した(*2)というのだ。
欧州連合という壮大な実験は、大きな曲がり角に来ているようだ。