梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

「いずれにせよ国民負担です」

 自民党の裏金問題が「政治とカネ」論議に火をつけ、予算委員会では政倫審・連座制・政策活動費などなど国会議員周りのQ&Aがほとんどの時間を占めている。どれも自民党としては呑みづらいことで、岸田総理らの回答は歯切れが悪い。「こんなことは早く政倫審に任せて予算審議をしたいのだ」という野党の意見は、ごく真っ当だ。

 

 予算審議で重要なのは「子育て増税問題」。少子化対策で3.6兆円が必要とされ、

 

1)既定予算の活用 1.5兆円

2)子供・子育て支援金制度導入 1.0兆円

3)歳出改革 1.1兆円

 

 で賄うという政府案(*1)。今、2)の支援金制度について、議論が沸騰している。政府はこれを増税ではなく、社会保険料増で予算確保を目指している。試算では、保険者1人あたり月額500円弱とのことだが、いくつか疑問点がある。

 

    

 

シンクタンク試算では、1世帯当たり1,300円/月超の負担

・同額を企業側も負担するので、企業の賃上げ気運に水を差し、非正規化を後押し

・そもそも、日本の社会保険料負担増加ペースは非常に速い

 

 要するに若者たちをより貧困に導き、少子化に拍車をかける愚策だというわけ。

 

 3)の歳出改革は、もっとひどいレトリック。歳出削減するのではなく、高齢者の介護保険料を負担増とすることで賄うというのだ。確かに改革といえば、削減とは限らない。総理は実質国民負担はないというが、2)も3)も国民負担増ではないか!

 

 ところが財務省出身の識者によると「いずれにせよ国民負担(増)です」ということ。仮に歳出削減を介護保険に適用すると、介護市場が縮小される。これは医療市場も同じ。介護・医療の従事者にとっては、収入減(≒負担増)になるからだ。

 

 なるほど、私などは「官から民へ」「より小さな政府」をずっと主張してきて、そうすれば国民負担が減ると思い込んでいた(*2)。これは政府に依存している人から、自立している人に富を移すというだけで、どちらも国民なのだから「パイの切り方を変えるだけ」なのだと気づいた。じゃあどうすればいいかというと、パイを大きくするしかない。やはり経済成長、生産性の向上・・・ということである。

 

*1:少子化対策財源、支援金の負担は1人平均「月500円弱」 首相答弁 [少子化を考える]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

*2:Leave Us Alone Coalition - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)