梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

半導体産業囲い込みの動きか?

 先月、半導体ファウンダリ大手のTSMC熊本工場が稼働し始めた。まだ震災から復興途上である熊本県にとっては、地場産業の拡大に向けた朗報である。さらに、第二工場の建設も決まっているという。熊本TSMCだけでなく、このところ関連事業所の新増設が相次いでいる。

 

・ラピダス 北海道千歳市

・キオクシア、ウェスタンデジタル 岩手県北上市三重県四日市市

・PSMC、SBIHD 宮城県大衝村

マイクロンテクノロジー 広島県東広島市

 

 これには日本政府からの助成金も多く寄与していて、総額は4兆円にも及ぶという。経済安全保障上の重要物資である半導体に、政府も積極的に財政支出をして国内生産力、技術開発力などを強化しようということだ。確かに、半導体関連産業力が国力に直結するという考え方(*1)はある。

 

    

 

 民間もそれに呼応するように、ルネサステクノロジーがカリフォルニアの企業買収をしようとしている。日本製鉄のUSスチール買収には異論を唱えたトランプ候補もバイデン大統領も、これには何の反応も見せていない(*2)。

 

 ただ、今回英<フィナンシャル・タイムズ紙>が、半導体素材大手JSRの買収に疑惑を報じている。日本は半導体素材や製造装置では、今でも世界屈指のシェアを持っているのだが、JSRの身売り先がファンドを介した産業革新機構(JIC)だというのだ。これは日本政府が、必要に迫られていないのに(意図的に)囲い込もうとした政策なのではないかというもの。

 

「何もかもが変だ」…英紙が日本半導体大手「9000億円買収」の真相を暴く | 本当に政府の「民間への介入」ではないのか | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)

 

 ある経産省の高官は、具体的なことは聞かなかったが、予算が半導体関連に持っていかれてしまうと嘆いていた。この記事もひょっとするとその一環かなと感じたので、続報を注目していきたい。

 

*1:川上産業としての半導体 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

*2:半導体関連企業は守らないの? - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)