日本の多くの健康保険組合の財政事情は、厳しいと伝えられる。医療技術の進歩や長寿命化は決して悪いことではないのだが、これまでより医療費がかさむことは間違いはない。そこで健康保険組合連合会(健保連)では、いくつもの改善提案をしている。その中にはマイナ保険証の導入(*1)もあるのだが「かかりつけ医」制度もそのひとつ。
「かかりつけ医」か「フリーアクセス」か…35年ぶりの改革の着地点 日本医師会側はどう巻き返した?:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
現在の日本の医療制度は、フリーアクセスが原則。誰でもどの診療機関を受診することができて患者の自由度は高いのだが、患者にある程度の医学知識がないと、診療機関とのミスマッチが起きて、業界全体として非効率になる可能性がある。また重複投薬(*2)のような課題も出てくる。
だから、まず患者はかかりつけ医に診てもらい、紹介された範囲での診療機関を選ぶようにすれば、ミスマッチは減らせる。その患者のデータはかかりつけ医のところで集約できるから、重複受診・投薬も難しくなる。ただこの記事にあるように「COVID-19」禍で医療制度の問題点が明示されてからも、日本医師連盟(日医連)の抵抗は激しい。
主な抵抗の動機は診療報酬の確保(*3)なのだろうが、医療業界がシステムとしてフリーアクセスを堅持したいのなら、やはり患者のデータを共有・連携できる仕組みが必要だ。フリーアクセスの結果、患者のカルテ等データは個別に管理されてしまう。正しい診療の為にも、他の診療機関でのデータが必要なのだ。マイナ保険証導入は、このデータ連携にも当然資する。
マイナ保険証導入反対の理由のひとつに「かかっている内科の医師に、精神科にもかかっていることを知られるのは嫌」という事例が引用されていた。もしこのような連携を拒絶する患者が多いなら、マイナ保険証がどうのというより、信用できる(顔の見える)かかりつけ医にだけは知っていてもらう制度にすべきだろう。
*1:マイナンバーカードに健康保険証を登録すること。これによって種々の利便性向上のほか、なりすましなどの不正請求を軽減できると考えられている。
*2:複数の資料期間を同一症状で受診し、必要以上の薬剤を入手すること。転売など不正行為に繋がることもある。
*3:健保連が合理化を図れば、そのまま日医連の業績低下になる。