梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

サイバー空間の国境問題(後編)

 サイバー空間での国境問題がはっきりしないゆえ、種々の問題が起きている。いちはやくサイバー空間を国家主権の及ぶところと宣言した中国では、

 

サイバー空間での国家主権 - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)

 

 で紹介したように、SNS上で香港独立を主張した人が帰国早々逮捕されているし、

 

特許権の域外適用 - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)

 

 にあるように国内法の域外適用が、日本も含めて多く認められるようになってきている。各国の法律に微妙な差があることから、A国とB国の間で相互に域外適用(*1)を掛け合ったら、どういう司法手続きによって解決すべきなのか・・・悩みは多くなるばかりだ。

 

        


 本当は世界で一つのインターネット/サイバー空間であって欲しいのだが、あえて国境を引くならばと、あるところで議論になった。

 

ドメイン名はどうか「go.jp」なら日本の公的領土、民間の「co.jp」も日本だ。

 ⇒ 最近は「.com」が増えている。これらの企業/団体はコスモポリタン

 

◆データセンターやサーバが国内にあれば、日本の主権領域というのは?

 ⇒ 産業界はサーバローカライゼーションを嫌ってTPPなどに提案した。いまは、多くの国際条約(*2)がこれを否定している。

 

◆税金など国家主権に関わる分野については、限定的にサーバローカライゼーションを認めてはどうか?

 ⇒ それは可能だが、現状のクラウド技術では、運営事業者もどこにそのデータがあり、プロセスされているか把握できない。

 

◆ではそのクラウドシステムを運営している事業者、制御している部署の場所に拠ってはどうか?

 ⇒ 事業者の拠点は分かるけれど、タスク割り振りを制御しているのは誰でもない。自律分散の技術によって自動化されているから。

 

 ということになって、迷宮入りしてしまった。この問題、今後も議論の場に立ち会えるなどしたら、都度紹介したい。

 

*1:例えば個人情報保護に関わる係争

*2:TPP、RCEP、IPEF、DEPA