梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

共同システムのオープン化は朗報だが

 私は現役時代、銀行システムに携わっていたことが10余年ある。開発や保守ではなく、どうしたら業務をデジタル化して改善するかという仕事(現在でいうならDX企画)だった。そのため銀行業務の現場を取材したし、当時の「金融Big-Bang」の潮流も勉強した。そこで気付いたのは、個別銀行の(システム部の)要求仕様は違っていても、業務そのものはほとんど同じであること。

 

 銀行間の差別化意識と、人月商売のSIer(弊社もそうでした)の都合で、個別システムを開発し続けていた(*1)わけだ。ある意味大変な無駄で、日銀が1セット共同システムを開発し、その運用をどこかのベンダーに任せれば総コストは劇的に下がると思われる。

 

    

 

 そこまでドラスティックでなくても、いくつかの銀行が共同センターに参画する企画は、ずいぶん以前から行われてきた。しかし実行段階で種々の問題が発生し、大手SIerがその企画を断念することが起きていた。しかし、

 

「MEJAR」のオープン化で山越えたNTTデータ、IBMの苦境でちらつく1強体制 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

 

 共同センター最大手のNTTデータが運営する「MEJAR」が、より開発・運用効率のいいオープン化を成し遂げ、同社が共同センター運営の「一強」になったという。そのこと自体は朗報で、ようやくここまで来たかとの思いがある。

 

 しかし実態は、道半ばにも届いていない。メガ銀から信金・信組まで入れて約500ある(*2)のだが、上記の記事の星取表ではNTTデータが22行、IBMが4行しか抑えていない。預金量についても、総預金量は約1,900兆円だから、NTTデータIBMで8.5%にしかならない。

 

 もちろん事業継続のことを考えると、全て1社に統合されるのは良くない。少なくとも2~3の共同センターは必要だが、そこにシステム移行していくようなインセンティブが、もっと銀行には必要だ。金融庁には、是非長期計画によって3つほどの共同センターに集約することを考えて欲しいし、公取には「九州地区でのシェアが○○%を越えるからNG」などと大人げないことを言わないで欲しい。

 

*1:銀行業務の標準化も必要(前編) - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

  銀行業務の標準化も必要(後編) - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

*2:銀行数は約120、信金・信組等が約400、農協が500強ある。