梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

NVIDIA・・・やはり製造業ではない

 先週、日経平均株価が34年ぶりの高値を付けた。世界経済が好調とはいえず、種々の懸念の中でインフレは収まらない。いやな雰囲気なのに、株式市場は(米国含めて)好調だ。そのけん引役と言われるのがデジタル産業、特に今回は半導体産業のNVIDIAの好決算が市場に好印象を与えた。

 

NVIDIA純利益8.7倍 11〜1月決算、AI需要急拡大で市場予想上回る - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 記事の見出しは「純利益8.7倍」だが、驚いたのは「売上高3.7倍」の方だ。成長産業である半導体分野とはいえ、製造業で前年同期比3.7倍もの売り上げなど、どうしてできるのだろうか?製造ラインの拡充、労働者の確保などなど、1年で達成できることと言えばたかが知れている。

 

        

 

 その理由を知りたくて、NVIDIAのリリース内容(*1)を読んでみた。事業分野毎の売り上げと、前年同期比の伸び率は以下である。

 

1)データセンター 184億ドル △409%

2)ゲーミング 29億ドル △56%

3)プロ・ビジョン 4.6億ドル △105%

4)自動車関連 2.8億ドル ▼4%

 

 売り上げの大半をデータセンターが占め、それがほぼ5倍になっている。半導体製造企業という看板はあるが、その実は部品や装置売りではなく、コンピューティング・プロセスを売るサービス産業だというわけ。

 

 例えば<NVIDIA DGX Cloud>というプラットフォームがAWS上にあって、これをユーザ企業が使うのだ。もちろん設備投資はいるが、短期間にサービスを拡充することは物理的な製造ラインよりはずっと容易である。

 

 製薬メーカーがNVIDIAのプラットフォーム上でAIをフル回転させ、業務効率(*2)を向上させたとの紹介もあった。半導体産業と言えば、サイクルがあって好調時はいいが不調時になると過剰な設備投資が負担になるのが過去の話。半導体も、サービス産業化が必然だと確認させてくれた事例だった。

 

*1:NVIDIA Corporation - NVIDIA Announces Financial Results for Fourth Quarter and Fiscal 2024

*2:例えば治験のプレシミュレーションで無駄を省く