「もしトラ」の続報である。先週米国事情に詳しい有識者から種々教えてもらい「予測不能なトランプ政権への対処法を考えなくては」という気になった。とにかく自国産業を守り、雇用を守るスタンスだから、今月紹介した日本製鉄のUSスチール買収など論外(*1)というわけ。
加えてデジタル産業は嫌いだから、私たちの目標「Global & Digital」は目の仇にされている。それでも、中国のIT産業叩きのようなことは起きないだろうと、その有識者は言う。巨大IT企業は米国企業でもあるし、国内にそれなりの雇用も持っているからだ。ただ実態を見ると、
・今年1月の米国レイオフは8万人越え
・そのうちテック企業は2.5万人を整理
・AIシフトやM&Aした事業のリストラが中心
という次第。これに対し、トランプ候補は何の反応もしていない。また先週、もうひとつ日本企業の米国企業買収報道があった。
ルネサス、ソフトウエア会社アルティウム買収で合意-約8900億円 - Bloomberg
USスチールの買収額約2兆円に比べると半分以下の額だが、対象となっているのは対中国包囲網に(鉄よりも)重要な、半導体関連のソフトウェア企業「アルティウム」である。上場市場こそオーストラリアだが、本社はカリフォルニア州にある。バイデン政権も、米国議会の民主党・共和党も、トランプ候補も、本件に関し何か発言したという報道はない。
やはり、USスチール本社のあるペンシルバニア州が「Swing State」で、カリフォルニア州が民主党の牙城であることが、反応の差になったものだろう。もしアルティウムを(政治的に)重要だと思っているなら、そもそもオーストラリア市場に上場させることに、政権や議会が翻意を迫っただろう。
「もしトラ」時代の企業買収は、本社の位置・労組の強さ・職種(インテリよりエッセンシャルワーカー)など考えてやれということらしい。