梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

中国ECサイトのリスク

 中国で注目の「全人代」が閉幕したが、経済の低迷を受けてかやや変調らしい。最終日に行われる首相のメディア対応も、今回は行われなかった。市民も生活防衛を進めていて、高級品市場が縮小。大きな売り上げを揚げていた日本の化粧品メーカーも、苦戦している。人気を集めているのが、北京のファーストフード店「南城香」の3元朝食。なんと約60円で食べ放題という。

 

 そんな中でも、中国のEC市場は活況を呈している。デジタル嫌いの習政権も、金融など社会インフラに手を出さなければ、IT産業を叩くことはない。ECに国境はないので、世界市場で中国ECサイトのシェアは高まっている。

 

    

 

 今年1月のデータでは、利用者数はテンセントが出資する「ショッピー」がアマゾンを抜いて首位に立った。ベスト10のうち、7社が中国系のサイトだという。日本ではまだ御三家(アマゾン・楽天・Yahoo)が強いと思っていたのだが、日用品を低価格で提供する「Temu」の利用者が急増している。

 

中国発格安EC、日本での利用者数急増。Temuは1年未満で1500万人超え(36Kr Japan) - Yahoo!ニュース

 

 多くの市民の生活が苦しくなっているのは、中国に限らず欧米や日本でも同じこと。より安い商品に目が向くのは必然なので、中国のECサイトは人気を集めている。ただ、そこには問題もある。

 

 ひとつには、粗悪品や偽ブランド品、場合によっては違法品が取引される公算が(西側サイトより)高いこと。当局の取り締まりも、なかなかサイト運営者に届きにくい。もうひとつは、中国の「国家情報法」によって、中国企業が得た情報は政権が自由に徴求できること。つまりECサイトに氏名・住所・クレジット番号などを入力すれば、それは中国政府に筒抜けになるのだ。

 

 例え当該サイトに「悪さ」をする仕掛けがないとしても、ヘビーユーザーになれば利用者の嗜好が分かってしまう。そのデータを利用したフィッシングメールで、ころりと騙されることになるかもしれない。

 

 そんなリスクもあることを、利用者の皆さんには分かってもらいたい。決して、日本サイトに誘導するつもりではないのだけれど。