国会で「地方自治法改正案」の審議が始まっている。論点となっているのは、改正案の趣旨が、
1)災害などに並ぶ非常事態なら、国は個別法に規定が無くても自治体に対策実施を指示できる
2)国と地方の関係は「対等・協力」とした原則は維持する
3)指示の前には、自治体からの意見聴取に(国は)努めなくてはならない
であるのに対し、
1)非常事態の範囲があいまい
2)国の包括的な指示権を認めることは、「上下・主従」関係になる
3)指示権の行使にあたり、国会の関与が認められていない
との指摘がある。「COVID-19」禍で自治体毎の対応では感染拡大を防げないとの議論があって、とりあえずは収めたものの次のパンデミック等にどう対応するかの一つの回答だと考えられる。
国の地方への指示権拡充 地方自治法改正案が審議入り - 日本経済新聞 (nikkei.com)
野党側の上記の反対論には理解できるところもあるのだが、非常事態をあらかじめ定義するのは困難だし、国会に諮っていては機動性を欠くとの政府の主張も最もだ。
本件に関しても「政府がどれほど信用できるのか」が、国民の判断基準になるように思う。ただ客観的に見て、国と地方は対等かという「原則」については、建前はともかく実態は極めて難しいと思う。私自身の、総務省のデジタルネットワーク、電子自治体の推進や、国交省の社会インフラのDX化の議論に関わった経験でいうと、ある程度のところは国で基本部分を作って自治体に利用を「指示」するのが効率的・・・というか現実的だと思っている。
上記の記事に「2009年住基ネットへの接続を、福島県矢祭町に総務大臣が指示した」とあるように、電子自治体推進には参加しない自治体があることは(市民にとっても)不利益なことだ。大きな自治体でなければ、DX人材を抱えることは難しい。中規模自治体でも土木技術者を持っていないところも少なくない。こんな状況では、国に多くを依存しなくてはならないはずだ。
一方、国にも申し上げたいことがある。「指示」だけではだめなのだ。もう一歩踏み込んで「代行」するところまでやってほしい。現実に能登半島地震の復旧には「国がもっと前面に出て」と主張する識者が多いではないか。