日本より一足先に、政権交代の可能性のある選挙に突入した英国。与党保守党は、18歳からの徴兵制度復活(*1)や年金受給者への減税などを打ち出して、これまでの、
・環境問題への取り組み減速
・不法移民の強制出国
政策などと合わせて支持拡大を狙っている。最大野党労働党も素早く「最初に取り組むべき6項目」を発表した。
・公的支出の厳しいルールを維持
・公共のクリーン・エナジー企業設立
・国民健康サービスを4万回/週増やす。財源は納税回避者らの取締り強化
・不法移民の密航を助ける組織犯罪防止のため、国境警備機関を新設
・反社会的行動防止のための警察官増と、違反者への罰則強化
・教師を6,500人増員、財源は私立学校への税優遇廃止
まだレベルがあっていないが、今後正式なマニフェストに練り上げていくものと思われる。ちゃんと財源を示しているので、有権者には判断しやすい。
21世紀になって、負けてばかりの労働党だが、ちゃんとしたマニフェストは毎回作成している。例えば2017年総選挙の時のマニフェスト(*2)では、
・大学授業料廃止で112億ポンド
・公務員給与上限廃止で40億ポンド
などが必要になるとあり、総額は486億ポンドである。その財源として、
・上位5%層に対する所得増税で64億ポンド
・企業課税軽減制度に対する効率性調査で38億ポンド
などを予定している。こちらも合計486億ポンド。
野党がこんな真似ができるのは、影の内閣があるからだけではない。実際に影の財務大臣は政策研究をして、表の財務大臣と渡り合えるようになっているからだ。そのため政府の情報は可能な限り公開されているし、野党には政策研究を行う費用も公費から支給されている。政策要員を雇うことも、政府の研究機関を使ったり、あまたある民間シンクタンクを利用することもできる。
写真は、今年訪問した王立防衛安全保障研究所(RUSI)の会議室。Intelligenceの源泉たる書籍の壁に囲まれたスペースだった。政策活動費って、本当はこういうことに使うべきだと思うのだが・・・。
*1:兵役とボランティア活動を選択可