今週のNHK「日曜討論」で、各政党の政策責任者が集まって、少子化対策とその財源などについて議論してくれた。私が注目したのは、経済成長が止まって特に若い世代の収入が増えていないことが少子化に拍車をかけているし、教育費の負担が重いのではというテーマ。最も典型的だったのは、維新の会の音喜多議員と、れいわ新選組の大石議員の議論。
◇音喜多議員
大阪では、教育無償化に向けて着実に実績を挙げている。雇用流動性を高めた社会を作り、若い(有意な)人たちに道を拓く。
◆大石議員
大阪の教育改革はウソ、高校等を廃止しているだけ。低収入の非正規社員を増やす維新の政策には反対。まず労働者の雇用を(固定的に)守るべし。
という次第。この意見の相違については、見る人の立場で評価が分かれる。ある書では、
・移動できる人とできない人の二極化が進んでいる
・移動できるのは、学歴や資産、自分への過度な自信を持つものに限られる
・その結果都会では過当競争、地方は人材不足で停滞となる
と分析していた。移動できる人から見れば、音喜多議員の意見は魅力的だ。現状に縛られずに、より高みを目指せる。しかしできない人は、大石議員の意見にシンパシーを持つだろう。私の感覚では、雇用流動性を増せば経済成長すると思えたのだが、調べてみるとこんな分析があった。
(独)産業経済研究所の鶴フェローの論文であり、
・現状は生産性の高い分野から低い分野への労働移動が多く、経済成長に寄与していない
・成長分野への円滑な労働移動は理想だが、直ぐの実現は難しい
・まず大企業のメンバーシップ型雇用をジョブ型に改めることから始めるべし
と言っている。これで納得がいったのは、音喜多議員の意見は大企業(や公務員)の雇用改革を先行させる前提だということ。維新の顧問でもある東洋大竹中教授も「リストラしやすく」と仰っているが、前提はこうなのだ。一方、すでに雇用流動性が高い小規模・零細企業の従業員や非正規労働者を守るということを、大石議員は言っている。対象がこれらの人なら、この意見も間違ってはいない。
「日曜討論」のような場では、誰もこのような解説はしてくれないし、議員自身が説明する時間もない。一般の人がこういう点を理解してくれるよう計らうのは、やはりメディアの仕事だと思う。