梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

意外にあっさり「改善に努める」と・・・

 先月、フランスの空港でSNS<テレグラム>創業者パベル・ドゥーロフが逮捕された。日本ではあまり馴染みのないSNSだが、1対1の秘話(*1)ができたり一定期間でメッセージが消えるなど、犯罪にはもってこいの仕様。ディープフェイクポルノ、児童ポルノ、麻薬取引、マネーロンダリング等に「活用」されている。多くのSNSが「コンテンツモデレーション」を進める中、イーロン・マスクの<X>とこの<テレグラム>は、規制に後ろ向きだった(*2)。

 

 しかし、今週保釈された彼は「犯罪者が悪用しやすくなる状況に陥った」と認め「大幅な改善を確実に実現」すると述べた(*3)。ロシア人だがウクライナ人の母親を持ち、ロシア当局から目を付けられていたから、相当の猛者だと思っていたのに意外とあっさり宗旨替えをしてくれたようだ。

 

    

 

 このSNSはロシアの反政府活動家故ナワリヌイ氏も使っていたが、メドヴェージェフ前大統領らも使っていると伝えられる。ロシア中枢部の情報もやり取りされていたかもしれない。SNS上のデータを監視することは、彼らにも困った事態かもしれない。ただマクロン大統領は、今回の逮捕とその後の取り調べに「政治的な意図はない」と言っている。

 

 とりあえず、上記の犯罪行為のプラットフォームになっている事態の改善はいいことだ。例えば、ディープフェイクで女性の被害が増え続けている韓国では、ユン大統領が「撲滅」を指示している。<テレグラム>の改善は、その助けになることは間違いはない。しかし、また新しい問題SNSも出てくるだろうから、いたちごっこではある。それに<テレグラム>を越える大物<X>も残っていることだし・・・。

 

*1:暗号化されているので運営側も内容を知りえないのが建前で、本当に覗いていないか、消さずに保存していないかについては不明

*2:政治とSNS、過去・現在・未来 - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)

*3:テレグラムCEOが保釈後初のコメント、「悪用防止策」を導入 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)