米国大統領選挙の記事が少なくなるほど、自民党総裁選・立憲民主党代表選の話題がメディアを席巻している。各候補者から、外交・安保、社会福祉、天皇家、原子力・環境、税負担などの政策が語られている。党内でも相互に批判していることもあり、活発な政策論議に見えなくもない。しかしベテランジャーナリストに聞くと「しょせん、選挙中のリップサービス」という冷めた返事が返ってきた。市民の政策課題への関心が高まるから、議論そのものはいいことだが期待してはいけないようだ。
一般市民からは「経済政策が一番重要」との意見が聞かれる。具体的には、
・生活弱者への助成
・地域や個人の格差是正
・産業振興による雇用拡大、処遇改善
というものだ。そういえば、今月で終焉を迎える岸田内閣の看板は「新しい資本主義」だった。結局それは何だったのか、分からないまま総理の座を譲ったことになる。
ルクセンブルグ所得研究センターで社会の不平等を研究しているブランコ・ミラノビッチ教授によれば、資本主義には2種類ある(*1)。
・リベラル能力資本主義
米国に代表される、広範な自由が認められた「Winner Takes All」型経済。高名な投資家や巨大ITのCEOなどが、ほとんどの富を独占するが、全体としての経済は大きくなる。
・政治的資本主義
中国に代表される、政府統制の範囲内での自由があり国家資本が主導する経済。政府や大衆の意図に反して大きくなれば、スポイルされる。ある程度のところまでの成長は期待できる。
いずれも政治とカネの問題を抱えることになるのだが、意味は異なる。前者は、カネが政治を買う。大統領選で多額の献金をした人物が、要職を得るようなことだ。後者は政治力がカネを集める。例えば許認可権限への賄賂で、清朝では国家予算の10倍もの不正蓄財をした宦官がいたという。習政権が「腐敗の撲滅」を掲げている理由がよくわかる。
ミラノビッチ教授は「日本には両方の資本主義がある」と言っている。結局政治のやるべきことは、両者の比率をどの辺にもっていくか決め、そのための具体策を練ることになろう。新しい総理&内閣には、その意識や目標を最初に示してほしい。