梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

TOP Secret が漏れていたかも

 安全保障上の機密を民間人まで含めて護るための「セキュリティ・クリアランス制度」が日本でも導入される。先の通常国会で成立した関連法案の担当大臣は、今自民党総裁選を戦っているお二人(小林鷹之高市早苗)である。

 

 この制度はどんなものか、3年ほど前に米国事情を調べたこと(*1)がある。誰がどんな情報にアクセスできるかを定めていて、資格審査も大規模(資格者約400万人)に行われている。例えば、

 

・情報の規定、漏れたことで致命的なダメージを受けるのがTOP Secret

・人の規定、TOP Secret にアクセスできるのは約225万人

 

 となっていることが分かった。情報の内容としては8区分が示されていて、その最初のものが「米軍の計画、兵器システム。軍事行動」だった。

 

沖縄の Camp Kinser

 今回、そのTOP Secret を含む機密情報が、民間企業によって中露に漏洩したとして制裁金が課せられるという事件があった。

 

「え、機密情報持ったま海外出張!?」多数の軍用機の技術が中露へ流出か? 米政府 自国企業に巨額の罰金を科す! | 乗りものニュース (trafficnews.jp)

 

 耳慣れない企業名<RTXコーポレーション>は、2023年に現在の企業名になる前は<レイセオン・テクノロジーズ>だった。世界一のミサイルメーカーであり巨大(*2)な軍需産業である。間違いなくTOP Secret を持っていたはずで、

 

・無許可の防衛品輸出

・機密指定された防衛品の不正輸出

・禁止地域への防衛品の持ち込み

 

 が問われている。最後のものは、中国等に機密情報が入ったPCを持って入国し、現地で情報を抜き取られたかもしれないこと。日本企業でも(首記制度導入前でも)、中国出張時は専用のスマホタブレットに切り替え、必要最小限の情報しかもっていかないようにしている幹部は多い。それなのに、米国を代表する企業がこれでは・・・。

 

 米国の同制度は、400万人も対象者がいて「機密を護れるはずがない」という人もいる。本件も参考にして、実効ある(民間企業を責め立てるだけではない)機密情報管理の在り方を、日本政府は熟慮して欲しい。

 

*1:米国のクリアランス制度(2) - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

*2:2020年実績で、売り上げ約100Bドル、従業員約20万人