梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧

パリ五輪のサイバーインシデント

開会式当日に複数のTGV路線にサボタージュがあり、どうなることかと心配させたパリ五輪だが、大きな影響をもたらすインシデントは発生しなかった。東京五輪では4.5億回の攻撃をしのぎ切ったが、今回はそれに10倍する攻撃があるとの観測もあった(*1)。しか…

建設業DXと5G

「DX with Security」のお話を方々でしているが、私一人で話す機会よりもう一人の講演者と分担して基調講演など承ることが多い。おおむね、ある業界でDXを進めている企業の役員がパートナーになる。今回もそんなイベントがプリンスホテルであった。その業種…

次の狙いはイーロン・マスク?

お騒がせ実業家イーロン・マスク氏と、トランプ前大統領が接近している。前者はトランプ政権2.0での閣僚ポストを望み、後者は選挙資金を望んでいると伝えられる。閣僚になって何をしたいのか分からなかったのだが、ひとつの仮設を思いついた。それはこんな記…

大統領選挙での暗号資産規制論

11月の米国大統領選挙。トランプ前大統領が狙撃されながらこぶしを挙げたシーンで「決まった」と思ったのだが、バイデン撤退から潮目が変わり今は混とんとしている。本来政策論争が聞きたいのだが、トランプ候補はあの通りだし、ハリス候補も戦略的に政策を…

仮設住宅よりずっといい!

もうじき8か月になるというのに、能登半島地震への県や政府の対応が遅いと非難の声が高まっている。被害の象徴である輪島市の7階建てのビルも、未だに道路に倒れたまま。倒壊原因の調査と解体促進の協議が始まった(*1)そうだが、やはり遅いとの印象はぬ…

自民党総裁候補と財務省の距離

旧盆の休みが明けると、政府の来年度予算編成が本格化する。先ごろ閣議決定されている「骨太の方針2024」に従い、各省と財務省の折衝が始まる。財政全般では「PBバランスの黒字化」が盛り込まれていた(*1)ので、例年にも増して激しい折衝になるだろう。た…

やれやれ、今度はドローンか

インドやベトナム、インドネシアなどに製造設備が移転しつつあるとはいえ、今でも中国は「世界の工場」である。その国が「国家情報法」などに基づき、機器が蓄積したデータを集めることや、場合によっては何らかの「国の意思」を聞きに及ぼす可能性があるこ…

CIOのいない3兆円企業

年商規模とIT導入(&DX)能力には、大きな相関関係がある。一部ITベンチャーのような企業を除く一般的な(IT)ユーザ企業では、ある程度の規模がないとITシステムの導入・運用は難しい。 10年ほど前大手SIerの社長は「年商300億円規模なら、ERPがどんどん売…

AI時代にはBI、いやBCかも(後編)

この Basic Computing Service という考え方は、今後先進国の主流になっていくと思う。いや各種インフラが整備途上の国でも、鉄道や道路、郵便、銀行、電力インフラの整備に先駆けて、インターネットとスマホが政府のサービスとして普及することも十分考えら…

AI時代にはBI、いやBCかも(前編)

AIの適用分野拡大には、光と影があることは何度か紹介した。米国俳優・脚本家組合のストライキなどは雇用不安からくる典型的な反応だ。人間の代わりにAI(&ロボット)が働いてくれるなら、一般市民にもその恩恵をということでBI(Basic Income)が議論され…

ITエンジニアの転職と年収

企業内でも業界内でも、あるいは社会全体としても、成長の基礎となっているのは人財で、適材適所にできるかどうかがカギになる。もちろん教育も重要だが、その知識や経験、意欲を活かせる職場でないと、個人も企業も不幸になる。したがってある程度の人材流…

ピークの時、影が差し始める

全国共通交通系ICカードを、持っていない人は少ないと思う。知らない街に行って、初めての公共交通を利用するときも、大いに役立つ。数年前だが、沖縄の<ゆいレール>で使えた時にはほっとした。利用も順調に伸びていて、先月は全国での利用回数が初めて3…

軍隊でのスマホガバナンス

組織内でサイバーセキュリティを徹底するための実施項目はいくつもあるが、その中に「Shadow ITを作らないこと」がある。Shadow ITとは情報システム部門が把握していないデバイス等のこと。個人用PCやスマホを使ったり、公用スマホでも認可されていないアプ…

夏休み、経済安保の参考に

国際環境の緊張で、企業人も安全保障の世界を意識せざるを得なくなった。特にサイバー空間では、一般人もエスピオナージの世界に直面させられることもあり得る。しかし、何が狙われるのか?どう狙われるのか?何がリスクなのか?簡単に理解できる教本は多く…

「中国製造2025」の目標はロボット

一昨年「Chat-GPT」の登場に始まるAIブームは、応用分野の開拓と同時に規制論も巻き起こした。キリスト教文化の影響か、欧米各国では「AIが人間を超える:シンギュラリティ」への危機感が日本より大きく、より強い規制を求める声が強い。そこで先週紹介した…

コンテンツモデレーション(後編)

一般ユーザにも見える形で警告を受けても、なお退かない場合には、 5)情報をユーザに勧める優先順位を下げて、アクセスしづらくする 「SNSプロバイダが勝手に(意図的に)優先順位をつけている」と非難されることの多い手段だが、投稿者がここまで悪質な場…

コンテンツモデレーション(前編)

先月総務省の「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」が、中間とりまとめ(*1)を公表した。ネット上の、偽情報、誤情報、なりすまし型の偽広告など社会的に大きな影響をもたらすものにどう対処するか。中でも投稿者自身ではな…

日本人の資産、1ヵ月の変化

ようやく日銀が政策金利上げを発表し、米国FRBが次回金利下げを匂わせる現状維持をし、英国が利下げに踏み切ったことで、円安が反転した。その結果、史上最高値を付けていた日経平均株価が大きく下げた。古い経済論だが、製造業中心の輸出産業が不利になると…

DATA Driven Economy の限界点?

「データは21世紀の石油」と言われている。この意味は、 ・データはデジタル経済を回す燃料となった ・20世紀のTOP企業は石油会社、21世紀には(データを持っている)ビッグテック の2通りがある。私としては、前者の意見に近い。「汲めども尽きぬ石油で儲…

仮想通貨を駆逐せよ!

私の所属するシンクタンクは「DX with Security」を中心に、デジタル政策を論じている。何度か申し上げているように、デジタル政策は行政からの押し付けではうまくいかない。官民が平等の立場で議論し、方向を定めていく必要がある。そこで<覆面座談会>で…

水平分業時代、NHKの在り方

昨日に引き続いて、放送と通信関連の話題をもうひとつ。SNSのような新メディアではなく、ずっと伝統的な公共放送についてである。先月「ネット配信をNHKの必須業務にする」改正放送法が成立した。スマホでNHK放送をみても、TVと同様の受信料が徴収されるよう…