3年に及んだ岸田政権も今月で終わる。防衛費増、G7サミット、異次元の少子化対策、派閥解消など多くのエピソード(功績)があった。ただ当初掲げた「令和の所得倍増計画」は「金融所得倍増」にすり替わってしまった。もちろん、金融所得だって増えればうれしい。具体策として挙げられたのが、
・新NISA 制度の恒久化、対象範囲の拡充
などだった。2024年から新NISAが始まり、2025年度からはiDECOの拡充が予算化される(*1)ようだ。公的年金が少ない人は個人年金でカバーする必要があり、iDECOは期待される制度ではある。
これらは結果的には、株式などの金融商品を買って運用することになる。個々人にとって日々の運用は難しいので、金融機関が仲介して基幹投資家などが運用する。マクロに見ると、個人資金が市場に入ってくることになる。では誰が出ていく(株を売る)のか?
一つの候補は日本企業での、政策保有株売却。企業が他の企業の株式を保有するのは、影響力を行使してビジネス上のメリットを得るためだ。しかし日本の市場では、いわゆる「持合い」など確たる意思がなく保有している株式が少なくない。
・100億円出資してくれれば、こちらも100億円株式を買う
・お互い株価も維持できるが、経営に口は出さないようにしよう
という具合。以前「失われた30年の主犯は株主*2」と述べたが、その会社を良くして儲けようと思っていない株主が、ここにいたわけだ。以前から海外の基幹投資家などは、政策株式保有の解消を求めていて、今年金融庁の有識者会議もそのむねを提言している(*3)。「持合い」が減って物言う株主が増えれば経営者へのプレッシャーは強くなり、より儲けられる体制に代わっていくはずだ。
金融庁はまず損保、生保、そして銀行などに政策株式の売却を求めている。そのカバーの一部を、新NISAやiDECOで行えると見ているのではないか。賛否両論あるとは思うが、企業も個人も儲ける体質に変わる、いい機会だと思う。
*1:金融庁、イデコ拡充を要望へ 税制改正、老後の資産形成後押し(共同通信) - Yahoo!ニュース