梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

初対面でも相手のすべてが分かる

 欧州の「AI Act」は、リスクベースでAIシステムをランキングし、非常に高いリスクを持つものを禁止している(*1)。AI兵器などは対象としていないが、

 

・人間の感情を認識すること

・公共空間でのリアルタイムの生体認証

・個人の社会信用スコアリング

・生成AIが著作物を参照すること

 

 の4点は譲れないと考えている。このうち2および3点目に関する、ハーバード大での実験が注目を集めている。

 

スマートグラスとAI、顔認証機能で個人情報が丸見え 詐欺師に悪用される危険 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 

 眼鏡越しに相手を見ると、顔認証で個人が特定され情報が検索されて、どんな人物であるか眼鏡の内側に表示される仕組みだ。

 

熱海駅にある熱海富士関のパネル

 利用者の立場からすると、このように名の知れた人でなくても、初対面でプロフィールが分かるのは助かる。不特定の人が出入りする商店などでは、顧客として有望かどうか、接客で気を付ける点はあるか、万引きや食い逃げの恐れがないかなどが分かれば、安心できる。

 

 しかし評価される側としては、気持ちのいいものではない。僕のプライバシーはどこに行ってしまったんだと思うだろう。この記事は、

 

SNS等の顔認証DBから、自己の情報を削除

・人名検索エンジンからも、同様に削除

・金融機関等のプライベートアカウントは少なくとも二要素認証を設定

 

 して少しでも自分を守ろうと言っている。しかし、これらのSNSやサイト以外でも、自己のデジタル情報はどこかにあるし、削除しきれるものではない。

 

・欧州では、これらの行為を法令によって禁止、違反者には罰で臨む

・中国では、国家に都合のいいようになら推進、都合が悪ければ弾圧

 

 のスタンス。米国では、カリフォルニア州で規制が論じられているが、まだ法令にはなっていない。さて、日本ではどうするべきなのだろうか?今回の総選挙でも、この点はほとんど議論されていないようだけれど・・・。

 

*1:欧州議会の「AI Act」 - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)