世界経済の発展には、国境を越えた「ヒト・モノ・カネ・情報」の自由な流通が必要だと、私たちは思っている。東西冷戦終了後の(今にして思えば短い)期間、世界の一元化は進んだ。その時期は、インターネットの普及とデジタリゼーションの波が非常に高くなった時代と重なる。世界の一元化に、そもそも国境などないサイバー空間の発展が寄与したことは間違いがない。
4つのファクターのうちの最後のもの「情報」が、最も自由な流通が遅れていると私たちは思っていて、国際条約に「国境を越えるデータの自由な流通」を盛り込むことに務めた。TPPやRCEPなどの国際協定にその主旨が盛り込まれ始めたころ、皮肉なことに国際情勢が緊迫してきて、4つの流通全体に暗雲が漂ってきた。ロシアやサウジアラビアの国境の壁はもちろんだが、世界第二位の経済大国中国が流通に竿差すようになって、問題は大きくなった。
先週始まった福島第一原発内に溜まった処理水の放出に対して、中国は日本産の水産物の全面禁輸を始めた。実は、このようなモノの禁輸は珍しいことではない。オーストラリアの白ワインもそうだし、台湾のフルーツも「害虫が見つかった」などの理由で禁輸されている。台湾の国民党支持の農家からは特例で輸入するそうだが・・・。
ヒトについては、反スパイ法の強化に伴い、事実上何の落ち度が無くても拘束されたり退去させられる(最悪行方不明に?)ようになった。今回の「処理水問題」で在中国邦人にも注意喚起がされ、公明党山口代表の中国訪問もキャンセルされた。
情報については、国家情報法などデジタル基本3法が施行されて、事実上「データ鎖国」状態にある。
唯一カネだけが、2018年に外資規制が緩和されて、外国からの投資が増えているのだが、それもいつまで続くかわからない。景気に不安の出た中国への投資を渋るケースもあるだろうし、逆に中国人が海外に資金を持ち出しているとの噂もあるからだ。
「日米の方が先に半導体などの禁輸措置をしたからだ」と言われるかもしれないが、大国中国として国境の壁を高めることは無責任だし、自国にとっても好ましくないと申しあげておきたい。