梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

技術輸出規制の目的

 Huaweiの最新型スマートフォンについて、西側諸国では「信じられない」との声が出ている。少なくともハードウェアについては、Apple社のものと遜色がないと評価される。特に7ナノ級の技術を使った半導体が採用されていることに、関係者が驚きを隠さない。

 

中国、規制をくぐって半導体開発加速か 米有力シンクタンクCSISが分析(電波新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

 

 それというのも、この種の半導体そのもの、半導体製造装置、関連技術はかつての中国にはなく、しばらく前から禁輸措置が取られていたからだ。米国のシンクタンクCSISは、米国を中心とする対中国禁輸は失敗したと述べている。

 

 Huaweiをはじめとする中国企業が、どうやってこの半導体や関連技術を手に入れたかは、私にも分からない。しかし一般論として、手に入らないとなれば何とかしようとするのは、米中対立のような大きな場でなくても当然のことである。

 

        

 

 今回、彼らは「何とかした」のだろう。逆に中国が他の国にレアメタルを供給しないと言った時、日本でも代替品の開発を急いだ。結果として、中国のレアメタルは世界市場での存在感をを減らすことになった。

 

 このようなことは、いくらも起きている。米国が最初に開発した核兵器も、やがてソ連が、そして中国が開発に成功する。いまでは北朝鮮のように多くの制裁を受けている国でも、自前の核兵器が持てるのだ。

 

 ある程度の技術基盤や資金を持つ国(*1)であれば、種々のコストをかければ入手できていない技術を開発することはできる。だから禁輸措置を徹底したからと言って、完全に封じ込めることはできないのだ。

 

 CSISが失敗と評価したが、今回の禁輸措置の目的が「永遠に中国に7ナノ半導体を作らせない」ことだったとしたら、確かに失敗である。しかしもともとの禁輸措置の目的は「中国が7ナノ半導体を得るのに、相応のコストを払わせること」だったとしたら、あながち失敗とは言えないのではないか。

 

 そういう意味で、CSISのスタンスには少々の疑問が残る。ひょっとすると、中国の脅威をやや大きく見せることが目的のレポートだった可能性もある。

 

*1:ライバル企業との技術開発競争でも同じこと