梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

「遅すぎる」のは貴方の方も

 経団連の、というより十倉会長の発言に関し、メディアが冷たくあたることが多くなった。例えば、

 

経団連会長が「岸田支持!」「消費増税せよ!」と叫ぶ裏にある、輸出大企業と政府との「国民生活度外視の共犯関係」(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

 

 のような記事である。経団連のWebサイトを見ると、会長発言要旨には見当たらない言葉もあって、公式発言ではないものが引用されているのかもしれない。私も岸田政権のやっていることは、大筋(防衛費増・子育て予算増・防衛三文書改訂・原発有効利用日米韓連携強化など)は間違っていないと思う。ただ、その表明の仕方や手順、あるいはブレたように見えることは問題である。

 

 十倉会長も思いは同じだろうが、こちらも舌足らずなのか、メディアに端々を切り取られて喧伝され、同じ轍を踏んでいるようだ。

 

    

 

 そんな中、事実上の最高会議である経団連の「会長副会長会議」で、円安問題などを特に取り上げて今日議論するとの報道があった。

 

経団連が「円安の是非」を来月議論…急激な円安で中小の収益圧迫、経済への影響懸念 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

 

 日銀が金融緩和策を修正する速度が「遅すぎる」との意見をまとめる方向だろうと、この記事は書いている。もちろん今の円安は異常で、その原因は日銀の低金利政策なのだから、早期の是正が望ましい。是非、強硬に圧力をかけて欲しいと思う。

 

 しかし「遅すぎる」のは、経団連(の会長副会長会議)も同じだと、私は思う。もっと早期に、日銀総裁交代のタイミングで提言すべきだった。その機を逸した故に「円安等で儲けている企業の集まり、国民を食い物にした」との批判を浴びる羽目になったのだ。

 

 とかく業界団体の動きは遅い。経団連のように1,500団体も加盟していれば、何かを言おうとして異論を唱える企業のいくつかはあるからだ。例えばサイバーセキュリティに関して中国企業への懸念を露骨に言えないのは、その中国企業(例:Huawei)がれっきとした加盟企業だからと言う人もいる。

 

 それは分かるのだが、個々の企業ではなく、日本産業界や日本社会のための提言なら多少の軋轢があっても行うべきだろう。それも、霞ヶ関や永田町に先んじて・・・。