先週の米国(分断)事情に引き続き、今週は中国の政治・外交に詳しい人に話を聞く機会があった。先月の台湾総統選挙は、中国が種々の方法で介入してくるだろうと思われていたが、結果は総統選は与党民進党が勝ったが、議会選挙では与党は第一党にはなれなかった。昨年10~12月期に台湾を襲ったDDoS攻撃が、前年同期の34倍に及ぶ(*1)という以外、目立った何かはなかったと私は感じていた。
その研究者によると「台湾市民は民進党の総統を選んだが、民進党を勝たせ過ぎなかった。その判断は絶妙だった」と評する。以前から中国は台湾に「平和か戦争か、繁栄か衰退か」の二択を迫っていた。「台湾独立を目指す民進党総統が続けば、戦争になるぞ。そうなれば衰退だ」というわけ。
情報工作は、SNSを使って「台湾軍は弱いぞ」「演習やってるけど、あれは上級市民が米国に脱出するためのもの」などと偽ニュースを流した。さらに旧来メディアや口コミも使って、広範囲に行われた。
しかし結果は上記のようなことだったので、習政権は振り上げたこぶしのやり場に困った。実際、戦争などしたくないのは中国も同じ。軍事衝突に至らない範囲で、圧力をかけるしかなくなった。そこで軍用機を台湾海峡の中間線を越えて飛ばしたり、ドローンや気球で嫌がらせをしている。
無人機器なら、たとえ撃墜されても全面衝突にはつながらない。実は習政権は人民解放軍の能力に疑問を持っていて、特にロケット軍(*2)については大幅に人事粛清(刷新?)をしている。実際人民解放軍の実力は(共産党にも)分からない(*3)ので、習政権ではその刷新を図っている途上なのだ。
例えば核戦力で米国と同等になるのは、早くとも2035年らしい。それまでは、他の戦力も含めて米中戦争などできないとのこと。偶然の暴発以外は、台湾有事は起きないというのがこの人の意見だった。ただ、サイバー空間は無法(グレーゾーン)地帯。「備えはあってしかるべし」もまた事実である。
*1:DDoS threat report for 2023 Q4 (cloudflare.com)
*2:ミサイル燃料の代わりに、水が詰まっていたとの報道もあった