次世代の計算機技術として、期待されているのが<量子コンピュータ>。後述するように計算の単位<Qビット>は純粋にデジタルとは言えないので、デジタル技術の革新とは言いづらい。その入門編的な解説は、下記の書が適当だと思う。
第三次計算機革命 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
現在のデジタル計算機の単位は<ビット>。0か1かである。量子コンピュータの演算単位<Qビット>は0~1の間の値を取ることができるので、1サイクルの間に多数の演算が並行処理できる。それゆえ、計算速度は飛躍的に向上する。そんな<量子コンピュータ>を、日本企業10社が集まって研究開発するとの記事があった。
量子コンピューター産学結集、世界と闘える? - 日本経済新聞 (nikkei.com)
この写真は、今年ロンドンのIBM社で見せてもらった<量子コンピュータ>のモデル。上記の記事にあるように、各国・各社の開発競争が激しくなっている。そんな中の日本企業群による新会社、もちろんいいことなのだが「再び国策コンピュータか・・・」とも思う。
1960年代、日本や英国で始まった<IBM互換機>などの国策コンピュータ開発は、技術・市場・産業競争力などで功績を残したが、今年の「ポスト・オフィス」事件のような社会問題(*1)も作った。過度に政府が関与することは、健全な産業育成に悪影響である。
ただ当時と違うのは<量子コンピュータ>技術については、より安全保障色が強いことだ。サイバーセキュリティの重要技術に暗号化があるが、ケタ外れの計算能力があれば従来の暗号を無力化(*2)できる。
だから<量子コンピュータ>技術は、産業競争力よりは安全保障強化のためのものなのだ。であれば「国策」の意味もわかる。その意味では、上記の記事のアプリケーション(創薬・新素材開発・物流改革)はミスマッチ。そもそもこれらのアプリは従来デジタル技術でも対応可能だ。日本政府も、この技術が(少なくとも)デュアルユースであることは明言して欲しいものだ。
*1:ITベンダーの責務(前編) - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp)
*2:4ケタの暗証番号も1万回試せば当てられるが、1万倍の能力があれば1試行で当ててしまえる