梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

他に候補者はいないのですか?

 今年は米国の4年に一度の大統領選挙の年だ。通常お祭り騒ぎが年初から、スーパーチューズデーで中間盛り上がりをし、11月の本選挙に向けて広がっていく。しかし、今回は両党とも候補者が決定的になり、当面話題がない。だから人気があるとはいえ、政治家でも巨額支援者でもない歌手の言葉が、大きなニュースとなって飛び交う。要するにニュース涸れなのだ。

 

 今回の話題は、トランプ候補が「TikTok禁止法案に反対」というもの(*1)。動画共有サイトTikTokについては、FBI長官が「安全保障上の懸念がある」と証言して、超党派で禁止法案がまとまりつつあった。膨大な米国国内の動画がUPされ、その付属データ(場所や投稿者、閲覧者など)が中国政府に渡ることが懸念されているのだろう。

 

        

 

 ところが(そもそもTiKToK規制は自らの政権で企画したことなのに)トランプ候補が、急にTiKTok容認を言い出したから、共和党内部に混乱が生じている。私たちのサイバーセキュリティ議論でも、40歳以上の人達はTiKTokは脅威たり得るので禁止した方がいいというのだが、若い人は「情報が得られなくなるので困る」という。洋の東西を問わず、若者はTiKToK禁止には反対なのだろう。

 

 トランプ候補は若者層には強くない。バイデン大統領がTiKToKアカウントを開設して若者受けを狙ったように、トランプ候補も若者層に受ける政策を打ち出したものだろう。要するに、ポリシーも何もなく「当選するためにやることは全部やる」わけだ。

 

 一方のバイデン大統領もよろしくない。トランプ候補同様「機密情報の持ち出し疑惑」がかかっているが、なんと検察官が「記憶力の悪い善意の年配者なので訴追しない」と言い出した(*2)のだ。これは「有罪」とどちらが重いのか分からないほどの「侮辱」。罪に問えないほどの「記憶力の人」に、本当にあと5年政権をゆだねるのだろうか?

 

 泥仕合もここに極まれりの様相の米国大統領選挙、あえて「他に候補者はいないのですか」と問いたい。

 

*1:TikTok禁止巡りトランプ氏が翻意-法案採決控え共和党議員にジレンマ - Bloomberg

*2:アメリカ下院で検察官証言、大統領選挙の代理戦に 機密文書問題で - 日本経済新聞 (nikkei.com)