何度か、中国企業バイトダンスが提供するSNSアプリ<TikTok>の危険性について紹介してきた。公表されないデータも含めて、利用者の情報は習政権に筒抜けになる(*1)と思っておくべきだし、偽情報拡散の道具に使われたり、場合によってはサブリミナル映像を仕込まれて市民の行動変容を誘いかねないと思っている。
米国政府はずいぶん前からその危険性について警告し、バイトダンスに米国企業などへのサービス売却を求めていたのだが、大統領選挙にあたりトランプ候補が(自分が言い出したにも関わらず)容認姿勢に転じ、バイデン大統領も自らアカウントを開設して若手有権者にアピール(*2)しようとしている。
これは米国だけのことかと思いきや、欧州各国でも似たような現象が起きている。
アングル:欧州政界で高まるTikTokの存在、極右の成功に危機感 | ロイター (reuters.com)
例えばドイツでは、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が巧みに若い有権者に、このツールを使って浸透している。彼らをネオナチとは言わないが、この種のカルト的政党(思想)は若者には受け入れられやすく、かつてナチス党がラジオなどのメディアでプロパンガンダを流したのが、SNSアプリに替わっただけとも言える。
そこで他の政党も、同様の戦術を取り始めた。他の国でも似たような傾向で、アイルランドのハリス首相は「TikTok宰相」とあだ名されていると、この記事は言う。今年は世界中で大きな選挙が一杯ある。欧州委員会の議員選挙もある。民主主義国家の政府・議員としては、選挙を背景にした有権者の意向には逆らえない。
冒頭述べたようなリスクは承知しながら、目の前の選挙のためにはやむを得ないという考え方だろう。<TikTok>によって操られる極右政権が欧州に満ちて・・・などということになれば、これは一大事であるのだが。
*1:中国「国家情報法」の規定による