ロシアのウクライナ侵攻が始まった時、いつものようにロシア側は政府機構・エネルギーインフラ・通信インフラへのサイバー攻撃を、リアル攻撃と併用していた。しかしこれを予期していたウクライナ側は米国企業らの助けを借りて、被害を局所化して抵抗力を保持した。その代表格が<スターリンク>。
インターネットを基地局ネットワーク等が破壊されても維持でき、手軽に移動も可能という衛星インターネットシステムである。能登半島地震のような災害対策にも、有効だった(*1)。インターネットはもちろん電源もないところでテレワークした人の話によると、
・ソーラーパネル含めてセットアップは30分くらい
・4台のPCで動画を見ても、十分な通信容量
・初期ハード費用が4万円ほどかかるが、利用料は1万円/月以下
という次第。極めて手軽なネットインフラで、軍事組織含めて非常に使い勝手がいい。海上プランもあって、クルーズ船では乗客サービスに利用されている。それが、今回海上自衛隊の護衛艦にも搭載された(*2)という。乗員の職場環境改善に資するとのことだが、非常時にこれで通信することも十分に考えられる。
通常軍隊は、自己完結で全てを賄えるものだ。通信・エネルギー・輸送・兵站・医療・衛生等々、社会インフラを自前で持っている。しかしインフラが高度化してくると、どうしても民間に依存するようになる。例えば、ロンメル師団が電撃戦でフランスに侵攻した時、戦車のガソリンは民間スタンドから調達していた。
インターネット通信もその典型例で<スターリンク>は今や、立派な軍事インフラである。危惧されるのはその(軍事的な意味での)安全性。本当の軍事インフラほどの(サイバー)防御力はないだろうし、こんな攻撃もありうる。
それぞれの停戦提案とその後 - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)
この記事で、ロシア軍がマスク氏を脅迫して<スターリンク>を一時止めさせ、その間にハルキウに進撃するミニ架空戦記シナリオを紹介した。さて、今後このようなことが起きるだろうか?
*1:能登半島地震で「スターリンク」が役に立った 被災時での「通信確保」の今後を考えた:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)