厳戒態勢のパリオリンピックが始まって、パリ中心部や競技会場周辺は厳重な警備が敷かれている。オリンピックを狙ったテロとしては、1972年のミュンヘン大会でイスラエル選手団が殺害された事件(*1)が思い出される。今大会では、東京大会より警備を強化しなくてはならない理由がいくつもある。
・ロシアのウクライナ侵攻開始
・前例のない Open Space での開会式
である。ロシアが国家として参加していないので、前大会同様ロシア由来のサイバー攻撃にも十分留意しなくてはならない。「侵攻したロシアは参加できないのに、ガザで虐殺しているイスラエルはなぜ参加できるのか」と不満を持つ人たちもいる。それ以前にフランスの地そのもので極右勢力が支持を伸ばすなど、ムスリムに対する圧力(*2)も高まっているし、それに対する反発も強い。
しかし、攻撃はパリ中心部や競技会場ではなく、社会インフラに対して行われた。
フランス高速鉄道 TGV設備放火 組織的な犯行の疑いで捜査 | NHK | フランス
パリから放射状に延びるTGVの沿線で、信号ケーブルなどに放火されて鉄道が止まったのだ。4ヵ所で破壊工作が成功、1ヵ所では未遂に終わったと伝えられる。開会式や競技を直接妨害できなくても、交通手段を破壊することで混乱を引き起こすことはできる。攻撃側は警戒の緩いところや時間帯を自由に選べるが、防御側は全てを24時間警戒する手段を持っていない。
東京大会では物理的なテロもなく、サイバー攻撃も4.5億回観測されたが深刻な被害はなかった。重要インフラ事業者を含めた、官民の尽力が成果を挙げた(*3)とされる。パリ大会ではこれに10倍するサイバー攻撃を予測する(*4)むきもあり、攻防はこれからが本番である。パラリンピック終了まで関係機関の緊張は続くし、私たちも報道等に留意していきたい。
*1:テロが手段から目的に替わり - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
*2:フランスの危機、2015年1月11日 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
*3:東京五輪を狙った4.5億回のサイバー攻撃、防ぎきった官民の連携力とは | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)