日本の紙幣に関する小さな記事が、今月2つ目に留まった。ひとつは「ゆうちょ銀行のATM」に関するもの。
ゆうちょ銀行ATM、預け入れボタン非表示→局員「あり得ない」…意外な事実 | ビジネスジャーナル
日本のATMは世界的にも珍しい機能を持っていて、預け入れられたお金を真贋鑑別した後、支払い用のストッカーに蓄えて、支払い用紙幣として使用することができる。これを還流式ATMといい、1980年代に普及している。このメリットは、
・預け入れ用と支払い用のストッカーを2種類持つ必要がなく、コンパクトで高機能
・人手によるストッカー間の移し替え作業が不要
・機器のダウンタイムを少なくでき、台数を削減可能
というものだ。実現には非常にち密なメカが求められ、専門家ではない私はその設計図を見て舌を巻いた。

運用のベストモデルは、30万円入金する人1人に対し、5万円出金する人が6人ならメンテの手間が要らないというもの。ただ上記の記事では、ストッカーが一杯になったか何かで、支払いは可能だが預け入れができなくなった事態を取り上げている。記事の主旨は「不親切なユーザインタフェース」だが、私の関心は違う。
ストッカーは2,000枚以上入るもので、複数内蔵されている。正しく運用するなら、準備金はミニマムにしてある(*1)ので、5,000万円以上入金しなければ一杯にならない。もし、ゆうちょ銀行が紙幣を入れっぱなしにしておく雑な運用をしているなら、業績に問題が出ても当たり前だ。
もう一つの記事は、どんどん現業を合理化しているメガバンクのこと。
「聖徳太子」紙幣に手数料 三菱UFJ銀 100枚入金で770円 - 日本経済新聞
「聖徳太子」の旧一万円札は、処理が手作業になるので手数料をいただきますという話。紙幣鑑別機能に対応していないせいだという記事もあるが、実はそれ以前の問題がある。もしお手元に旧紙幣があるなら確認して欲しいのだが、1984年前の旧紙幣は、百・五百・千・五千円に比べ、一万円札のサイズが少し大きい。
サイズの違う紙幣を混在して入金されるとメカ的に処理が難しく、還流機構が開発できない(か非常に大きく高価になる)。私の知っているベテラン設計者によると、「競合のT社に知恵のあるやつがいて、大蔵省・日銀に紙幣の幅を統一すれば、還流式が出来て銀行が楽になると求めた」のだそうだ。
真偽のほどは不明だが、のちに私自身がデジタルロビーイングを始める、一番最初のきっかけだった。