梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

コンテンツ省の提案・・・その前に

 経団連が石破内閣に最優先の政策テーマとして申し入れたのは、法人税減税でも円安是正でもなく、コンテンツ産業の育成だった。

 

経団連「コンテンツ省」の設置提言 予算2000億円に - 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 この考え自体は悪いことではない。「コンテンツ」の定義をどこまで広げるかについては議論があるだろうが、日本のソフトパワー向上につながることは間違いがない。韓国のKポップに水をあけられているとの指摘があるが、日本のアニメ文化だって世界で十分通用している。

 

 この記事の写真にあるように、時代劇も国際的な地位を築いてくれるかもしれない。

 

京都醍醐寺五重塔

 ただ基本は民間がやることなので、「コンテンツ省」がどれだけ役に立つかは不透明だ。また、2,000億円というのも中途半端な気がする。というのは、公共放送NHKの事業規模がおおむね6,000億円もある(*1)からだ。そのうちの5,800億円あまりは、事実上の税金である受信料収入。

 

 公文書研究が専門の早稲田大学有馬教授は、BBC改革を例にとりネットメディアに対抗するNHK改革を提案(*2)している。骨子は、

 

・国際放送や政策広報関連は廃止し、YouTube上に移す

・TV税やコンテンツ料収入で運営する「メディア公社」がコンテンツを作る

・日本版FCCを設置し、電波オークションなどを実施する

 

 というもの。この書にあるように、BBC視聴時間は20分/日、YouTubeは64分、Netflixは40分というのが、BBCが改革を始めた危機感。NHKBBCにすら遠く及ばず、5分/週しか見ない人が半数近いとある。これに「税金」を6,000億円近く投入しているわけだ。

 

 総務省から当該部分を分離してコンテンツ省の核とするなら、まずNHK改革をしてもらいたいものだ。TV業界ではNetflixがよりよいコンテンツを作り、脚本家等も優秀な人から引き抜かれている(*3)という。そんな時代ゆえ、NHK改革は待ったなしだと思う。

 

*1:令和6年度収支予算と事業計画 [要約] (nhk.or.jp)

*2:公共放送の改革案 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)

*3:「正直、Netflixに引き抜かれたい」テレビ局員の本音が爆発…プロ野球とメジャーリーグと同じ構図がテレビ業界にも|ニフティニュース (nifty.com)