難しい裁判で科学的な証拠を見せられ、素人の裁判員は戸惑ってしまう・・・。指紋鑑定くらいなら見た目で分かるが、DNAだとどうかな?ましてやサイバー犯罪でのデジタルフォレンジック(証跡)を示されても困るのではないか?そんな思いをしたのは、今月やたら冤罪や難しい裁判の報道が多かったから。
「袴田事件」は57年を経て無罪が確定した。袴田さんは最も長く留置された死刑囚として、海外メディアでも報じられている。また「和歌山毒カレー事件」で死刑が確定している林死刑囚については、冤罪だとする映画<マミー>が上映されている(*1)。この裁判も直接証拠はなく、他の誰にもできなかったことを検察側は状況証拠の積み重ねで示した。
このころまでは裁判員制度はなかった。しかし今公判中のいわゆる「紀州のドンファン事件*2」では、直接証拠がなく被告人が無罪を主張する中、裁判員の判断が求められている。
そして先週、「大阪羽曳野殺人事件」の一審で、やはり被告人否認のままドライブレコーダーの不鮮明な映像が決め手となって「有罪・懲役16年」の判決が出た。
記事の写真を見る限り、とても個人を特定できるものではない。記事では大阪府警元捜査幹部の話として、
・ドラレコ画像は「いいのを見つけた」と思った。しかし画質はよくない
・難しい事件なのは確かで、よく逮捕した。遺族のことを思えばここは勝負
と伝えている。裁判は3ヵ月に及び、その間の裁判員の負担は(時間的にも精神的にも)大きなものがあったと思われる。重いストレスで、PTSDの症状を呈する人もいるという。
まだサイバー犯罪が裁判員によって裁かれるケースはないと思うが、それも時間の問題。手口を説明されても理解が難しい上に、証跡が偽物でないことが争点となったとき、サイバー捜査官やフォレンジック研究者の議論をどう判断すればいいのだろうか?法曹界の人とサイバー分野の人が、しっかりと議論して誤った運用にならないよう留意願いたい。
*1:〈有罪か、冤罪か〉夏祭りのカレーで60人以上が中毒、4人が死亡…小さな町で起きた大事件で死刑囚となった4人の母・林眞須美60歳の現在地 | 文春オンライン (bunshun.jp)
*2:「元妻に覚醒剤、代金は10万円」証言 紀州のドン・ファン殺害公判 [和歌山県]:朝日新聞デジタル (asahi.com)