師走は「お師匠さんも走る」ほど忙しく、駆け込みの何かが多い季節。最近は振替・振込もなどの決済物は自動化され、かつてほどの繁忙ではないようだが年末期限というものは存在する。昨年末も、ネット広告などで「ふるさと納税、お急ぎください」のメッセージが溢れた。
旅行サイトにまでふるさと納税のページがあり、自治体によっては当該サイトの旅行者で使えるクーポンを返礼品にしているケースがあった。見ると、納税(振替)額の30%のクーポンが貰えるという。これなら、ふるさとの特産品として目立ったものがない自治体でも競争市場に打って出られるわけだ。
一昨年の統計が出てきて、全国総額の振替額は1兆円に迫った。おそらく昨年は1兆円を超えただろう。このぐらいの規模になると、税収に支障が出てくる自治体もある。
ふるさと納税で住民税流出 横浜市は272億円超 川崎市、世田谷区も多額 全国の総額は過去最多に:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
なるほど、ガーデンベアでおなじみの横浜市では、全国最大272億円が流出している。ただ国からの補填が3/4あって、実質的な税収減は70億円弱。ただ財政に余裕があるとされる東京23区や川崎市では、補填がなく丸損になる。世田谷区の保坂区長は「約100億円の減収、悪夢だ」と語る。
本来はふるさとだったり、思い入れがある街に寄付して、その分減税してもらおうというもの。それが返礼品目当ての競争になり、競争に勝つために民間企業を使ってしまうわけだ。納税者の方も最大30%の還元目当てに、合法的な節税に走る。
問題なのは、国から自治体への補填。ある記事によると、一昨年で3,000億円に上るという。この原資は一般納税者からの税金だから、市民としては返礼品をもらわないと実質損してしまうことになる。ふるさと納税した人の得たであろう3,000億円(1兆円の最大30%)を、皆さんの税金で埋めているわけだ。
初期の目的を逸脱し、納税者も自治体も参入企業もカネ儲けに走らせてしまったこの制度、もはや廃止すべしと思うのだが・・・。