安全保障がらみでは「日本の(サイバー空間を含む)Intelligence能力が低い」と酷評されていることは、何度か紹介している。その分野での改善努力も進んでいることは知っているが、もっと顕著に存在感を示している分野もある。
安全保障と不可分だが、担当機関や法令の異なるのが治安の分野。組織として担当するのは警察である。何年か前に警察庁の「サイバー局」が設置され、それ以降着実にサイバー犯罪対応能力が増してきている(*1)。それを証明しているのが、この記事。
中国背景のサイバー攻撃集団「APT40」注意喚起 7カ国と警察庁:朝日新聞デジタル (asahi.com)
APT(Advanced Presistent Threat:高度で持続的な脅威)とは、主に国レベルがバックについて高度なサイバー攻撃能力を持つ集団のこと。各国の治安機関(場合によっては軍)が反撃してつぶすこともあるのだが、次々と現れて攻撃を仕掛けてくる。そのなかでもいくつか特に困った集団があり、そのひとつが今回「名指し」されたAPT40という組織だ。
彼らの攻撃を防ぐのは一般的に難しく、できれば抑止したい。そのため機先を制して「お前のことは分かっているぞ」と警告し、同時に被害の恐れのある企業・団体に注意喚起をするのが<パブリック・アトリビューション>という手法。十分なIntelligenceがないと、できない「技」である。
各国の治安機関と十分な情報共有や意見交換を行い、このような行動に日本の治安機関が参画できたことは当面満足できる成果だ。私の所属するシンクタンクでは、海外の関連ニュースをリサーチしているが、このところ日本警察を評価する報道が増えていると担当研究員がいう。
警察庁には「官尊民卑の傾向」があるのだが、デジタル政策は官民平等でないとうまくいかない(*2)。その点をより理解してもらえれば、日本警察のサイバー空間での存在感はより増すことになるだろう。