「闇バイト」という言葉が、一気にポピュラーになってきた。秘匿性の高いSNSを使い、実行犯を集めて強盗などさせる手口である。「ホワイト案件」で検索するとそんな誘いがやってきて、犯罪などする気がないのに最後は強制されてしまうという。昔から暴力団などがリアル空間でやっていた手下集めの手法を、サイバー空間でやっているわけだ。
実行犯の上位にリクルーターや指示役など何階層か犯罪者がいて、上に行けば行くほど捜査の手が及びにくくなっている。実行犯を捕まえて指示役に連絡させたところ「織田信長」の名前が表示され、一瞬電話がつながったという。実行犯は指示役などに個人情報を握られているが、逆はないので捕まるのはほぼ実行犯だけである。
被害が急増していて、警察の対応にも批判が集まっている。
木村太郎氏、続発する「闇バイト強盗事件」に私見「おとり捜査をやったら全部解決できる」でも「できないから…」 - スポーツ報知
のように、おとり捜査をすればいいとの意見もある。日本の警察がおとり捜査をしないというのは間違いで、凶悪犯罪の場合には認められている。FBIなどは、組織犯罪に対して常套的に使っていて、サイバー空間も利用して巨大カルテルを摘発したこと(*1)もある。
そう、サイバー空間での犯罪にはサイバー空間での捜査が必要で、警察庁もサイバー局を設置するなど対応を急いでいる。その能力を高めるためには、サイバー空間からの情報収集がカギとなる。その意味では、ACD法案(能動的サイバー防御法:通称サイバー法)の議論が停滞している(*2)のが問題だ。
ACDというと憲法21条違反だとか、市民監視社会への入り口だとの批判が多い。しかし、現実に市民に被害が出ている案件に対処するには、SNS等の(適切な)監視による犯罪予防も考えていくべきだ。岸田政権なら閣議決定だけで決められたのに・・・ではなく、市民の安全にかかわることは与野党協力して進めてほしいと思う。