梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

日本侵略のための可能行動

 国際情勢が緊迫していて、どこで大規模な紛争が起きてもおかしくない状況である。企業も自社のリスクとして、Warfareのことを考えざるを得なくなった。そこで企業自身も<脅威インテリジェンス>を活用すべきと申し上げた。ただ受け身で考えるだけではなく、日本や日本企業を攻撃しようと思っている側の立場に立って<可能行動*1>を見る必要がある。

 

 そこでかつて情報機関に勤務していた人物と、どう攻めてくるかの議論をした。私が要望したのは「Worst Case Scenario」である。彼が示した手順は、

 

1)ウクライナ戦争やイスラエル・イランの紛争のように、市民生活に大きな影響のあるインフラを止めるか混乱させる。狙われやすいのは、電力網(*2)と上水道(*3)

 

        

 

2)続いて医療、放送などを混乱させる。金融もできれば狙うが、少し労力が大きいので無理をすることはない。目的は政府のガバナンス力を低下させること

 

3)ここまで通信網は活かしておく。それに乗せて偽情報をばらまいて、市民の間に不和のタネを播き、不安をあおる

 

4)通信や交通も止めて、パニックを起こさせれば、もう政府が「安心してください。すぐ復旧させます」と言っても誰も信じない

 

5)仕上げに防衛関連システム(C4I)に侵入、軍事組織が組織的な抵抗ができないようにする

 

 というもの。

 

 この時点で、実際の侵攻がなくても市民があきらめてしまい、政治指導者や軍司令官も白旗を揚げてくれるかもしれない。ロシアが空軍を集結させたり、中国が尖閣諸島(や八重山沖縄諸島)に上陸する必要すらないのだ。

 

 白旗を揚げた日本政府は、利尻・礼文両島をロシアに割譲、沖縄独立を認めて琉球国を承認してしまうかもしれない。まさに無血占領である。上記の重要インフラ防御はもちろんだが、市民の心が折れなければ「Worst Case」は避けられる。政府はこのようなリスクがあることを、周知徹底するべきだと思うのだが・・・。

 

*1:脅威インテリジェンス入門(1) - 梶浦敏範【公式】ブログ

*2:日本のサイバー防衛、2027(1) - 梶浦敏範【公式】ブログ

*3:イスラエル対イラン、サイバー空間の暗闘 - 梶浦敏範【公式】ブログ