いよいよ来週トランプ政権2.0がスタートするが、すでに米国社会は動き始めている。特徴的だったのは、多くの企業が「DEI」の看板を事実上下ろしていること。多様性・公平性・包摂性を意味するこの言葉は、マイノリティの権利保護と考えたら分かりやすいと思う。
マクドナルドも降ろした「DEI」看板、保守の圧力に企業相次ぎ屈服 - Bloomberg
の記事にあるように、2020年のジョージ・フロイド事件(&BLM運動)をきっかけに大きく広がった考え方で、企業の雇用・処遇等にあたりマイノリティを十分保護するように求めたものだ。
しかし最高裁判決で「大学入試のアファーマティブアクション(*1)は違憲」とされて以降、企業に(過度の)DEI見直しを求める訴訟が相次いでいるという。この記事のタイトルには、企業が保守派の圧力に抗しきれなくなったとあるが、私はもともと企業にとってDEIは重荷だったと思う。
マイノリティを差別することはいけないが、どうしても区別は残る。雇用や処遇に関して、実力主義を採るのは企業として当たり前のこと。当たり前のことをしながら、同時に差別していないかどうかを、実力以外の何かで検証する作業は難しいし面倒だ。
米国民主党の中には、マイノリティの人権を護る意識の高い人たちがいる。それはこの国がマイノリティを迫害・搾取してきた歴史ゆえだが、その想いが強すぎると「逆差別」を産む可能性もある。現実にオバマ政権の8年間は、学歴も収入も低い白人層にとってマイノリティを過保護にした悪夢の時期(*2)だった。それが、泡まつ候補だったトランプを大統領に就かせる原動力になる。
米国民主党も、欧州の中道政党のように実質的にエリートを代表する党になってしまい、本当にマイノリティの味方の政党ではない。ましてや今日からは「Triple Red」の政権運営である。企業がさっさと重荷を脱ぎ捨ててしまうのは、必然と言えるだろう。
*1:積極的差別是正措置