先端半導体は重要戦略物資で、米国は製造装置とともに有志国以外への輸出を禁じ、日本やオランダにも禁輸措置を守るよう求めている。では、先端でない半導体はどうか?いわゆるレガシーチップというもので、すでに多くのモノに内蔵されている。半導体単体でなく、機器に組み込まれた状態で輸出されることもある。単体での規制はできても、組み込み機器の完全なリストアップは難しいので、ロシアなどは家電品から取り出したレガシーチップを、兵器等の製造に使っているともいう。
以前、日本製鉄のUSスチール買収に絡み、バイデン、トランプ両候補がいずれもNGを出したのに、半導体産業については何も抵抗しなかったことを紹介した(*1)。しかし今回、テキサスインスツルメントのレガシーチップ製造工場に、バイデン政権が50億ドル近い助成(一部は融資)をすることが報じられた。
米半導体TI、政府から46億ドルの支援獲得-レガシーチップ向け - Bloomberg
大統領選挙に向けのいわゆるバラマキ合戦は始まっているが、本件は先週紹介したように業界団体を味方に付けようという動きではない。この助成によって完成するのは、テキサス州の工場。雇用も2,000名程度だし、一時的な建設労働需要も数千人規模で止まる。何より、この週は共和党支持で動かない州である。
レガシーチップについては、中国などからの半導体輸入に関税をかけるのもハリス候補の政策のようだ。まずは自国産業の強化、育成ということ。このこと自体に文句を言うつもりはないが、民主党政権でも製造業への配慮をすることは分かった。確かに製造業は(かつて)多くの中間層を育んだ。そのイメージが残っているかもしれないが、すでに米国はサービス立国、金融立国である。その点をトランプ候補もハリス候補も理解していないのが、気になるのだが・・・。