梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

企業にとっての「地政学リスク」

 国際情勢の緊張が高まってきて、冷戦後として最大のリスクを世界が抱えてしまった。象徴的なものとして「終末時計」があるが、これが昨年より1秒進んで「人類滅亡まで残り89秒」になった(*1)という。

 

 いくつも世界の10大リスクを取り上げてきた(*2)が「Gゼロ世界が混迷して、国家間武力紛争の脅威が高まっている」ことは共通認識である。国際政治・外交の分野ではなく、純粋に経済活動を担う産業界にも、その影響が現れている例えば、IPAが毎年発表している「情報セキュリティ10大脅威」では、今年初めて地政学リスクがランクインした(*3)。

 

    

 

 そこで企業としても何か考えなくてはいけないと、種々開催されているセミナー等に参加することもある。<ユーラシアG>の講演などはとても面白いのだが、聞き終わって勉強になったなとは思うものの、さて俺はどうすればいいんだっけと自問することが多い。

 

 あるコンサルファームの研究者は、勉強した内容でどう動けるかをサポートするのが仕事だと言う。綺麗に言えば「地政学リスクを自分事にしてもらう」お手伝いなのだが、実態はとてもどろどろした話。日本企業AがB国で事業展開をしていて、B国に内戦危機が起きそうだとする。A社内では、

 

・危機管理者 リスクが高く撤退を勧めますが、ご判断は事業部門で

・事業部門 全面撤退はとても高コスト、なんとか事業継続の道はないか

・経営者 関係部署で話し合って決めてくれ

 

 と責任のなすりつけ合いになりかねない。事業部門は「損失を管理部門や経営トップが負うなら止めて見せます」と啖呵を切ることもある。そこでコンサルファームが登場、皆さんの意見を聞き、立場を理解し、それでも問題点を指摘し、関係部署の調和を図っていくのだという。「コンサルタントの仕事の大半は調和」と教えられた通りの、地道な作業だ。

 

 サイバーセキュリティも分かりにくいが、普通の会社員にとって地政学リスクはもっと難しい。この分野でも「プラス地政学人材」が求められているのかもしれない。

 

*1:「終末時計」残り89秒、過去最短を更新 全世界の指導者への警告と - BBCニュース

*2:世界の10大リスク2025(WEF:前編) - 梶浦敏範【公式】ブログ

*3:IPA、「情報セキュリティ10大脅威 2025」発表。組織の脅威に「地政学的リスクに起因するサイバー攻撃」が初選出 - INTERNET Watch