梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

政界・官界・産業界

IT協会のサイバーセキュリティ研究会

(財)企業情報化協会(通称IT協会)は、企業のDXなどを促進するためのイベントや勉強会を多数企画・実施している。私もいくつかの企画に参加させてもらっているが、中心となっているのは「サイバーセキュリティ戦略マネジメント研究会」。今年で第9期を迎…

米国大使館での意見交換会

また、米国大使館からお声がかかった。本国から専門家が来たので、意見交換をしたいということ。専門家のCVは添付されていて、長年政府機関で国家安全保障に携わり、この20年程はサイバーセキュリティを専門としていて、今は某セキュリティ企業に所属してい…

AIタレントのCM初登場

生成AIの登場は、各方面に大きなインパクトを与えた。 ・いよいよAIが人間を超える ・人間の職場がAIに奪われる ・AIを使えるか否かで、人の価値が二極化する といった言説が、紙メディアにもデジタルメディアにも散見されるようになった。かつて、米国の有…

混乱する米国にこそ学ぶべし

米国の会計年度は、10月から始まる。先月末、与野党が拮抗する議会両院で新年度予算が成立せず、あわや政府閉鎖かというところまでバイデン政権は追い詰められた。本予算成立までのつなぎ予算案も再三否決され、まさにギリギリのタイミングで最後のつなぎ予…

医療機器業界でのSBOM採用

かつてソフトウェア開発が「自家薬籠中」のもので、ソースコードを部外(&社外)に持ち出すことがあり得なかった時代には、多くの企業で同じようなコードを書く社会全体では非効率なことが行われていた。これを改善して、皆が使えるコードを公開し合ったの…

大災害は必ずやってくる

国交省の関係で、土木工学・地学関係の先生たちと意見交換する機会があった。このところ世界規模で大災害が頻発しているが、この先生たちから見ると「まだ序の口」なのだそうだ。日本社会にとってのリスクとして、 ・東南海沖地震 ・富士山噴火 ・首都圏直下…

業界団体別の意見とその反応

いわゆる「ジャニーズ問題」で、先週驚くべきことが2つ起った。長年未成年者からの性搾取をしてきたとされる件については、弁護の余地はない。その点にはおおむねコンセンサスが得られているが、ではどうするのかについてはまだ迷走中の印象だ。 影響は一芸…

英国のActive Cyber Defense

間違いなく英国は、サイバーセキュリティの先進国だ。初めてオリ/パラがサイバー攻撃にさらされたのが2012年のロンドンだったこともあるが、伝統あるインテリジェンスのノウハウをサイバー空間での闘いにも活かしている。 日本でも新たなサイバーセキュリテ…

台日協力会議のこぼれ話

会議の終わりに、最後の司会を務めたITRIの局長が、 「この会議を発展させて、台日のみならずAPECエリアに協力の輪を広げていきたい」 とまとめてくれた。もちろん日本側にも否やはない。この日に来てくれた企業の人達を中心に、協力体制を整備しようと応え…

意義あるリカレント教育と転職

日本経済低迷の原因が労働生産性の低さにあるというのは、多くの識者が一致する点。生産性向上にはリカレント教育が必要というのも、ごく常識的な改善策だ。しかし現実には、雇用側も労働者側もなかなか本気になってくれない。 外資やジョブ型雇用は女性の味…

無間地獄に落ちた「総点検」

従来型の健康保険証を廃止する件、現時点で岸田政権は来年秋という期限を延期することは考えていないようだ。理由は従来型の保険証のセキュリティ性の甘さにあることは、私のには自明に見えるのだが、これも公式には認めてもらえない。また、マイナンバーそ…

援けたいのは人か?企業か?(後編)

政府が言う「だれ一人取り残さない」政策対象は、やはり人(市民)であるべきで、法人ではないと思う。雇用があると言っても、経営に問題があって従業員への還元も不十分、諸般の規制にも反し、法人税も払っていないような企業なら延命させない方がいい。 ち…

援けたいのは人か?企業か?(前編)

政治スローガンは悩ましいものだ。「中小企業は国の宝」「だれ一人取り残さない」と掲げて、公に反対できる人は少ない。しかしいずれも、現実的には難しいテーマだ。考え方としては、 ・働きたい人は、だれ一人取り残されずに働けるようにする ・雇用のほと…

日本経済に好転の兆し?

ウクライナ紛争や移民問題、エネルギー問題に熱波が追い打ちをかけ欧州の景気が後退しつつある。米国景気は逆に過熱気味、中国はデフレに陥るかもしれないという。そんな中、日本経済が好調だとの報道があった。株価・税収・設備投資・賃上げなど、大企業に…

日本政府のAI運用指針案

生成AIの登場は多くの人達にインパクトを与えたので、各国政府が(AI全体についての)規制を検討し始めた。G7各国は「広島AIプロセス」で信頼できるAIを求めていくことでは同意したものの、日米はソフトロー指向、欧州はハードロー指向が鮮明になっていた。 …

被害に遭うと対策にも力が

お盆休みの前に、多くのメディアが「中国軍が防衛省をハッキングした」とのニュースを流した。元になった報道は<ワシントン・ポスト>のものと思われる。 中国軍が防衛省にサイバー攻撃と報道、政府は詳細コメントせず - Bloomberg 先週紹介したように、NIS…

真のリスクはここから始まる

内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は、政府のサイバー防衛の要である。2000年に、内閣府に設置された「情報セキュリティ対策推進室」がルーツで、以降政府内のみの留まらず、民間含めた日本全体の安全・安心のための施策を展開してきた。数次の「サ…

サイバー兵士の採用と処遇(後編)

先日、陸上自衛隊で指揮官だった人らと、本件について話す機会があった。彼らが指摘したのは、民間人として完成した人だけでなく、もっと若い人を採用すべきだということだった。ある元陸将によれば、 ・サイバー攻撃先進国(!)北朝鮮では、10歳前から素質…

サイバー兵士の採用と処遇(前編)

最近気づいたのだが「NHK解説委員室」というサイトがあって、ニュースでイラスト入り解説をした内容が、イラスト込みで掲載されている。普通の人にも分かりやすく、かつ見逃し配信の役割も含めて、なかなか良いサイトだと思う。 自衛隊 サイバー人材を獲得せ…

異次元の少子化対策と婚外子

「静かな危機」と呼ばれる少子化問題、日本に特有のことではなく、先進国ならどこも抱えている課題である。特殊出生率が2を越えているという米国だって、増えているのは移民であって、WASPの人口は減り続けている。 岸田政権は異次元の少子化対策として、年…

中小企業の外形標準課税

大企業と中小企業の区分は、税制上からは資本金1億円という境目がある。この数年、大企業が業容はそのまま資本金だけ減らす「減資」という措置をして、中小企業の区分に入るということが増えている。最初にこのようなことを耳にしたのは、私たちも「COVID-1…

AI規制はまずソフトローから

サイバー空間での動きは眼に見えない。その上サイバー空間には国境がなく、国内法が適用される保証もないし、そもそも「有体物法」ではデータの窃盗などは罪に問えない。加えて技術の進歩や、適用分野やシーン(*1)の広がりが極めて速い。法規制を検討しよ…

クリアランス制度の適性評価

先週の<日経ビジネス誌>に、日本でのセキュリティ・クリアランス制度(SC)に関する記事が掲載された。私もコメントを寄せさせてもらっている。 日本型セキュリティー・クリアランス、米国は「同等」と認めるか:日経ビジネス電子版 (nikkei.com) 私の主張…

官民連携はあくまで対等で

政府がサイバーセキュリティ戦略本部会合を開き、重要インフラ企業にサイバーセキュリティ対策強化の指針を示した。このところのサイバー脅威の増大(*1)もあり、社会的責任の大きい重要インフラ企業の防御力は、社会の安定に不可欠だ。 サイバー攻撃の経営…

「Active Cyber Defence」の具体策

もう20年以上サイバー脅威は存在していたのだが、多くの人がそれを知るようになったのは数年前からだろうか。2017年にランサムウェア<NetPetya>が世界で暴れ回って、日本企業も被害を受けた。少なくとも大企業の経営者、関係者は目が覚めたはずだ。 ロシア…

マイナンバーカード騒動で支持率低下

通常国会で重要法案を沢山通し、安倍政権でもできなかったことを多く成し遂げた岸田政権。順風満帆に思えたのだが、思わぬところで躓いてしまった。それがマイナンバーカードの信頼性。主にデータ入力時のミスのようだが、銀行口座が別人に紐づいていたり、…

気付いた記者はいた

今月「骨太方針2023」が閣議決定された。これは夏から始まる次年度予算折衝のベースとなるもので、ここに文言がないと新規の予算申請はまず通らない。この「方針」が導入された小泉内閣の頃はメディアも大きく取り上げ、担当大臣がジャーナリスト相手に激論…

教員の「根本的」働き方改革

2024年から、これまで時間外労働の上限規制の対象とならなかった物流業界や医療界も規制対象となる。これが「2024年問題」で、いずれも人手不足な上に規制が加われば社会問題を引き起こすと懸念されている。 これらほど目立たないが、実は教員の残業時間の多…

通信の秘密をめぐる報道

先週末、ある程度予想していた記事が出た。報じたのは朝日新聞が最初だった。その後NHKのTVニュースでも同様の内容が伝えられている。 「通信の秘密の保護」に制限検討 サイバー攻撃への対処、政府が強化 [岸田政権]:朝日新聞デジタル (asahi.com) 憲法21条…

QUADでの次世代インフラ論(後編)

ローカル5Gは、工場内のような閉じた場で、教育・訓練・シミュレーション等に役立つことは分かっている。しかし広域5Gはどうなのだろうか、私は高速道路や主要道路での自動運転が一番近いキラーアプリケーションだと思っているが、確信はまだない。昨今の…