KADOKAWAに対するサイバー攻撃の被害が拡大している。当初別システムに保管されているから問題ないとされていた、学校法人角川ドワンゴ学園の学生についての個人情報も窃取されていたことが分かった。また、<ニコニコ動画>に出演していた人の個人情報が、闇サイト等にさらされているという事態(*1)も発生している。
私は、常々「サイバー攻撃は、個人情報漏洩に限定して考えるな。重要インフラの事業継続を脅かす攻撃が一番怖い」と言っているが、決して個人情報漏洩を軽視しているわけではない。多くの人の生命にかかわる被害を防ぐのが、最重要だと申し上げているのだ。
個人情報漏洩リスクもいろいろある。昨年NISCから、私のものを含む送受信したメールが漏洩した可能性があると警告を受けた(*2)。NISCを装った詐欺メールなどが来るかもしれないから警戒せよとのことだ。
その件は、これまでのところ問題は見えてきていないが、今回の<ニコ動>出演者の件は、個人情報漏洩の顕在化した被害と言えるだろう。その最も懸念されるところは、SNSなど匿名であることを前提にしてきた情報発信が、実名としての発言として見直されること。
インターネットに一度流れてしまったデータは、どうあがいても回収できない。「あの時、こんなこと言っていたのは、実はこの人でした」と付記されて拡散されてしまう可能性がある。いや、今回のKADOKAWA事件の主目的はこれだったのかもしれない。
最初に執拗な攻撃と聞いて、単なるカネ目当てではないと思った(*3)のだが上記仮説はその疑問を晴らしてくれる。つまり<ニコ動>での意見表明(例えば批判)が気に入らなかった誰かが、情報発信者の実名を暴露することで復讐し、今後似たようなことをする人物をけん制したと考えられるのだ。
SNSでの情報発信などで、匿名ゆえ好き勝手のことを言うのもよろしくないが、全くの無責任・安全地帯からの非難では終わらないこともあると認識させてくれた事件である。
*1:「普通に外を歩くのも怖い」…個人情報を晒されたニコ生配信者を取材 個人にできる対策は? - ライブドアニュース (livedoor.com)