梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

国民審査のための情報開示

 次の週末は、石破政権の評価を国民が下す総選挙。TV局は毎日のように特番を組み、各党党首・幹部が出演している。新聞も世論調査など駆使して、状況分析に余念がない。ある意味、情報は市民が受け取り切れないほどあふれている。

 

 しかし、同時に実施される最高裁判所裁判官の国民審査については、ほとんど報道がない。辞めさせたいと思われる人に「✖」印を記入する方式なのだが、正直対象者の情報がないので何も記入しないか、でたらめに記入するケースがほとんど。俗説によれば、2番目の人が一番多くマークされるらしい。

 

 三権分立で、司法の世界にも市民が影響力を持つための制度だが、このやり方で1/2の「✖」を集められる人などいるはずもない。現に、いままで辞任させられた判事はいない。

 

    

 

 ところが、今回複数の記事が見つかった。東京新聞は、対象となる判事の判決に関わった履歴を公表(*1)している。例えば、2022年の一票の格差判決は「違憲」だったが、ある判事は「合憲」としていたことがわかる。

 

 また日経新聞は、6名の判事にアンケートを実施している(*2)。私が特に注目したのは「司法分野におけるAI利用の在り方」という質問。

 

・裁判の本質にてらし、どうすれば効率的か、当事者や国民の満足が得られるか検討

・前向きだが、裁判官の判断への関与は、信頼を損ねないよう慎重な議論が必要

・判決への利用は慎重、事務の合理化・効率化には前向き、機密扱いも課題

・判断作用は裁判官が行うことが前提、執務効率化に利用するのが当面の検討課題

・活用の効果とリスク管理の議論が(法曹界以外で)ある、司法での活用を考える

・国民の信頼確保が最重要、国民の理解を得られる利活用を考えていく

 

 要約すると以上のような回答だった。言葉の端々にも重要な情報があり、これなら「信頼できる裁判官か否か」の判断材料になる。寡聞にして知らなかったこのような報道、もっと前面に出してほしいですね。市民も、国会議員だけでなく、彼らの意見に耳を傾けてみるべきである。

 

*1:最高裁の裁判官をチェックしよう2024 対象6人の「判断」どんな? 衆院選と同時に「国民審査」を実施:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

*2:国民審査を受ける最高裁裁判官6氏、アンケート回答結果 - 日本経済新聞 (nikkei.com)