梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

デジタル社会

自治体等の需要喚起も必要(前編)

先週自民党役員人事と内閣改造があったが、大きな枠組みは変わらなかった。デジタル担当の河野大臣は留任。デジタル行革大臣も兼務することになり、マイナンバー騒動などの収拾に引き続きあたってもらうことになる。ある総務大臣経験者によると「とにかく今…

法人マイナンバーあればこそ

マイナンバーと言えば個人番号のことしか報道されないが、実は法人にもマンナンバーがある。付番しているのは国税庁で、 ・行政の効率化や利便性向上 ・公平、公正な社会の実現 ・新たな価値の創出 が目的で導入されている。具体的には、法人の納税や還付、…

地方TV局は重要インフラか?

昨日に引き続き「放送と通信の融合」の話を。NHKは受信料で成り立っている・・・では民放はというと、こちらはCM収入が中心。人気ドラマやバラエティ番組で視聴率を競っているのも、それがCM収入に反映されるからだ。ただかつてのようにCMが新聞や週刊誌のよう…

懐かしい言葉「放送と通信の融合」

「公共放送NHKは、皆様の受信料で成り立っています」 進学、就職、転勤などの多いシーズンになると、よくこのメッセージが聞かれる。転居してもちゃんと受信料を払ってくださいねという意味だが、住居によって視聴者を識別するのは難しい時代になってきてい…

無間地獄に落ちた「総点検」

従来型の健康保険証を廃止する件、現時点で岸田政権は来年秋という期限を延期することは考えていないようだ。理由は従来型の保険証のセキュリティ性の甘さにあることは、私のには自明に見えるのだが、これも公式には認めてもらえない。また、マイナンバーそ…

AI学習利用規制(北風vs.太陽)

Web上の記事や画像は、特に制限しない限りは、何人が参照しても構わない。いわば人類の共有財産だ。もちろん、版権元に断りなく剽窃したり変造したりすれば、著作権法などに違反することになる。生成AIが、これらのデータを学習して成長することは、必然の流…

"Under 40s"の世代に期待する

一部研究者や、実務の専門家だけのものだったサイバーセキュリティという言葉は、2010年代から徐々に人々の間にひろまってきた。 ・ロシアのウクライナ電力施設等への攻撃 ⇒ 軍事関係者、重要インフラ事業者 ・日本年金機構やグローバル企業への攻撃 ⇒ 大企…

フリーアクセス医療の課題

日本の多くの健康保険組合の財政事情は、厳しいと伝えられる。医療技術の進歩や長寿命化は決して悪いことではないのだが、これまでより医療費がかさむことは間違いはない。そこで健康保険組合連合会(健保連)では、いくつもの改善提案をしている。その中に…

サイバー空間の国境問題(後編)

サイバー空間での国境問題がはっきりしないゆえ、種々の問題が起きている。いちはやくサイバー空間を国家主権の及ぶところと宣言した中国では、 サイバー空間での国家主権 - 梶浦敏範【公式】ブログ (hatenablog.jp) で紹介したように、SNS上で香港独立を主…

サイバー空間の国境問題(前編)

「サイバー空間には国境がない」と、Global & Digitalを推進する私たちデジタル政策を担当する者たちは言い続けてきた。しかし、この空間には従来の国家主権が届かないゆえに、 ・法秩序が不十分で、無法地帯に ・個人情報保護や特許権、著作権などで不具合…

映画界を生成AIが揺さぶっている

今週「Mission Impossible」最新作のプロモーションで来日するはずだった、トム・クルーズはやってこなかった。米国俳優労組がストライキに入ったからで、広報・宣伝活動もできなくなったからだ。ストライキの規模は43年振り、脚本家も同時にストライキを打…

日ASEANのデータ越境基盤

「DATA Driven Economy」である現在では、企業が活用できるデータの質と量が、その企業の成長に深くかかわってくる。質の中には、そのデータがタイムリーに使えるかも含まれるし、量の中には役に立つデータという意味も含まれる。私は、企業のデータ活用には…

マイナンバーカード騒動で支持率低下

通常国会で重要法案を沢山通し、安倍政権でもできなかったことを多く成し遂げた岸田政権。順風満帆に思えたのだが、思わぬところで躓いてしまった。それがマイナンバーカードの信頼性。主にデータ入力時のミスのようだが、銀行口座が別人に紐づいていたり、…

欧州議会の「AI Act」

今月、欧州議会が「AI法」の承認に関する投票を行った結果、圧倒的多数で可決された。世界に先駆けたAI規制を本格的に議論するスタートラインに、EUは立ったことになる。日本のように議会で議決すれば法律が決まるというわけではないのが、この国の立法の難…

教員の「根本的」働き方改革

2024年から、これまで時間外労働の上限規制の対象とならなかった物流業界や医療界も規制対象となる。これが「2024年問題」で、いずれも人手不足な上に規制が加われば社会問題を引き起こすと懸念されている。 これらほど目立たないが、実は教員の残業時間の多…

官製アプリではイノベーションは無理

先週「Fourth QUAD Open RAN Forum」に参加して、そこでの「Beyond5G」つまり6G関連の議論について注文をつける記事を書いた。開発や設備投資を先行させても、キラーアプリケーションが育たなければ、後発国に追い越されるし普及もしない。5Gでは中国の後…

マイナンバーカードの本質

政府が普及に力を入れているマイナンバーカードで、トラブルがいくつか報告されている。 ・コンビニで証明書を発行したら別人の書類だった ・「マイナ保険証」では別人の情報が登録されていた ・マイナポイントが誤って付与されていた ・紐づけされる銀行口…

特許権の域外適用

先週に引き続き、デジタル裁判の結果をもうひとつ。今度は国内の結果である。動画配信サービス「ニコニコ動画」を運営するドワンゴが、動画にコメントを流す特許を侵害されたとして米国FC2らを相手取って起こした控訴審が、一審判断を覆してドワンゴ勝訴とな…

米国通信品位法第230条

先週「Google・ゴンザレス裁判」として知られる訴訟が、米国最高裁で結審した。私も含めて、デジタル政策の関係者はほっと胸をなでおろしている。この裁判は、 ・2015年、ISISがパリでテロを起こし130人ほどが犠牲になった ・ISISはYouTubeを利用してテロを…

「DFFT」4文字のどこに軸足が

先月末のG7デジタル相会合で議論になったことに、DFFT(Data Free Flows with Trust)がある。産業界はずっと「国境を越えるデータの確保」を求めて来て、それをTPPに入れ込む努力をしたことを、以前紹介した。 TPP第14章に込めた思い - 梶浦敏範【公式】ブ…

Decentralized Systemの信頼性

中央管理者のいないシステムは、一般的に効率的になる。コンピュータの学界としては自律分散学会が追及しているもので、メインフレームを中心としたCentralized Systemから、個々の端末機が能力を高めてネットワーク化したDecentralized Systemとしようとい…

新たな格差「AIデバイド」

今月に入って、TVのニュース・論説番組が盛んに「生成AI」についての特集を組んでいる。ChatGPTの第四世代バージョンは、かなりのレベルの論説をほんの数秒で出力してくれる。他にも文章の要約や、別の視点からの論評、多国語への翻訳、プログラミングまで、…

サイバー文明研究センター5周年

昨日は、久しぶりに慶應三田キャンパスに出かけた。ここには「サイバー文明研究センター」という組織があり、僕も発足時から議論に参加している。「インターネットの祖父」と呼ばれるDavid Farber教授が初代センター長で、現在は「インターネットの父」とあ…

ご挨拶

梶浦敏範です。これまで4年ほど、ペンネームの新城彰として、 Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com) 新城彰の本棚 (hateblo.jp) などで、記事を掲載してきました。今年度から、改めて公式ブログを掲載させていただきます。<只今参上>では、いろいろな…