梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

デジタル社会

ライドシェアの名を借りた地域助成

タクシー業界におもねったとしか見えない「日本版ライドシェア*1」が始まって、2ヵ月余りがたった。全国一斉スタートではなかったこともあって、利用実績のデータなどはまだ整っていない。EBPMの観点からすれば、データを採る努力も必要なのだが、それも十…

SIMスワップ対策は本人確認強化で

このところ世間を騒がせている犯罪手口の一つが「SIMスワップ」というもの。携帯電話のSIMを勝手に更新され、自分の携帯は使えなくなり、犯人の手元には自分の携帯が残ってしまうというものだ。犯人はその携帯を悪用し、高額な買い物をしたり、電子マネーチ…

思ったよりも早くやってきた

AI技術の急速な発展により、社会が変わるぞとの予感は事実上の確信だった。ただ、それが思っていたよりも早くやってきたなと感じることが、今週2件あった。ひとつには、AIを悪用してマルウェアを(技術力のない人物が)作成すること。 生成AI、悪用のおそれ…

日中韓デジタル三国志の1ページに

先の週末、4年半ぶりになる日中韓三ヵ国による首脳会談があった。この間に、出席する首脳すべてが入れ替わっている。そしていずれの国も、大きな社会課題を抱えている。 ・少子高齢化 ・不動産高騰 ・格差拡大 などで、国民の不満が高まっているという共通…

CBPRの現在位置(後編)

ではCBPRの現在位置はというと、これまでにAPEC参加国&地域21のうち9国・地域(*1)がCBPRシステムに参加している。日本ではJIPDECがアカウンタビリティ・エージェントに指定されていて、2016年から認証活動をしている。エージェントは現在7団体あり、認…

CBPRの現在位置(前編)

「ヒト・モノ・カネ&情報の自由な流通」は、経済発展に寄与する。これは経済がグローバル化した今では、より重要となった真理である。特にデジタル社会では、情報の流通は飛躍的に増している。しかし流通が安全に行われることは必要条件で、特に個人情報と…

ステマ&インフルエンサー規制

広告ではないのだが、実際は企業や製品を宣伝している内容のTV番組などは以前からある。最新作が公開された「あぶない刑事」シリーズの例では、ニッサンがスポンサーでタカ&ユージが日産レパードで疾走するシーンが良く観られた。「NCIS」ではギブス捜査官…

AI利用者と供給者の「信頼」

AIが種々の作業を合理化することは間違いがなく、様々な分野で利用(もしくは試行)が始まっている。ただその用途については、いかがなものかとの反対が出てくることもある。例えば教育分野でレポートを生徒に課したところ、AI丸写しの回答が出てきたような…

裁判員制度15年、見直し要では?

日本の裁判に一般市民の感覚を入れる、市民の法曹界への参画を進める・・・などの目的が掲げられた裁判員制度の導入から15年が経った。2022年6月時点で、裁判実施件数は1.5万件を、裁判員を務めた人は9万人を越えたという。しかし辞退率が7割近いなど、課題…

Web3.0の足元の問題(後編)

Web2.0では、ドメイン名は国際的な管理団体ICANNが衝突させないように、一元的に管理している。新しいドメインを申請すると、審査が行われて衝突しているようなら認可されない。しかしWeb3.0では、ICANNのような管理者は存在しない。しないだけではなく、い…

Web3.0の足元の問題(前編)

Web3.0の時代がすぐそこに来ているとする書物は、いくつも出版されている。これからのビジネスパーソンは、Web3.0を理解し使いこなせないと「うだつが上がらない」と脅迫するような記事もある。ではその実態はどうかというと、広くあまねく普及するにはまだ…

中国人民解放軍のDX

中国人民解放軍は、5つの戦区(東・西・北・南・中部)に統合作戦指揮機構があり、陸軍・海軍・空軍・ロケット部隊が統合運用される仕組みになっている。実戦力である4軍種の他に、2つの支援部隊「戦略支援部隊」「中央軍委聯勤保障部隊」がある。 今月、…

スマート家電が乗っ取られた?

このところのエレクトロニクス製品は、ほぼすべて小さなコンピュータを内蔵していると考えられる。それによって、自動車も家電もずっと使いやすくなった。メンテナンスも楽になって、相対的なライフサイクルコストも下げることができた。その一方、新しいサ…

民主主義国家ゆえ致し方なし

何度か、中国企業バイトダンスが提供するSNSアプリ<TikTok>の危険性について紹介してきた。公表されないデータも含めて、利用者の情報は習政権に筒抜けになる(*1)と思っておくべきだし、偽情報拡散の道具に使われたり、場合によってはサブリミナル映像を…

日本にデータセンターを作るには

訪米中の岸田総理は、大統領との会談や議会での演説のほか、産業界の要人とも会談している。代表格がMicrosoftのブラッド・スミスCEO。同社は、総理との会談の後に、日本でのデータセンター投資(*1)を発表している。 日本でのデータセンター新設/投資は、…

異例の裁判官弾劾裁判

先週、国会内の裁判官弾劾裁判所が、仙台地裁の岡口判事に対し「罷免」の判決を下した。裁判官というのは、法曹界の中でもひときわ狭い世界で、他の世界との交流も少ない。司法修習生を終えるときに、道を選ぶのだが、 ・検察官は職務がハード、捜査検事など…

ニュース映像をじっと見ている

マグネチュード7.7とは、かなり大きな地震だった。震源地は台湾島東部のすぐ沿岸、花蓮県では12人ほどの犠牲者が出たという。年初の能登半島地震もマグネチュード7.6だったから、ほぼ同じ規模。しかし能登半島地震で245名もの犠牲者が出たのに比べると、人的…

1000倍のレバレッジ経営!

先月、電子商取引(EC)大手ベスト10に、中国企業が名を連ねているが、中には怪しげなものもある(*1)と紹介した。特に日本でも急伸しているのが「Temu」というサービス。創業は2022年9月というから、まだ1年半しか経っていない。激安ECサイトで、中国の…

紙幣のセキュリティと事業者の負担

気が付けば、日本の新紙幣発行まであと3ヵ月しかない。現役時代ATMの製品企画・事業企画に携わったことがあり、紙幣切り替え時の苦労について多少は分かる。 ATM等関連機器の開発部署では、発行前から厳重な管理の下で新紙幣サンプルを貸与してもらい、鑑別…

アルゴリズムへの逆風強まる

このところ欧州で、ITシステムに関する批判がいくつか巻き起こっている。典型的なのは、富士通の英国子会社(旧ICL)が納入したポストオフィス向けのシステムで、多くの冤罪被害者が出た事件(*1)。会計システムのバグで、お金の帳尻が合わなくなり横領を疑…

スタートアップ優遇にならず(後編)

「デジタル庁」発足から3年ほどになるが、彼らの努力は買うとしても、前編で述べたようなリテラシーを中央官庁が得るには、10年ほどの時間がかかると思う。さらに、行政機関特有の問題点もある。 民間・民間の取引では、資本主義の原則に従って商談を進める…

スタートアップ優遇にならず(前編)

中央省庁のシステム開発・運用は、かつては<国策SIer>に任せるのが普通だった。それは洋の東西を問わず、英国でもその傾向はあって、国策企業ICLに英国政府システムは多くの発注が流れた。ICLが経営不振に陥った後は、同じIBM互換機メーカーだった富士通が…

ブレるバイデン大統領の危うさ

「もしトラ」や「いまトラ」という現象に、世界は息を呑んで行方を見守っている。最大の問題はトランプ候補の予測不能性であって、世界秩序や常識の崩壊すら思わせる。そんな候補がなぜ強いのかと考えると、結局現職バイデン大統領が弱いからだということに…

いわゆる「ベンダー・ロックイン」ですね

先月、英国に出張していた時、富士通の子会社(旧ICL)の幹部が議会公聴会に呼び出された。700名にもおよぶ郵便局長・従業員に。ポストオフィスが公金横領の冤罪を着せたとされる事件。今年の正月TV特番で連日放映され、大きな社会問題になっていたのだ。そ…

自動運転の産みの苦しみ

新しい技術が開発され、実用化され、普及していく過程においてはいくつものハードルがある。リソースの規模として、私の実感は、 ・基礎的な技術を固め、なんとか利用できそうなものを完成させる開発 1 ・使ってもらって不具合がないように、安全措置などを…

ハイテク自動車盗とMaaS安全対策

昨年の車両盗難件数が公表されて、被害の第一位はランドクルーザー(450件)だという。以下、プリウス(282件)、アルファード(184件)となっていて、この3年間被害上位10車種が、いずれもトヨタ&レクサスなのだという。 車両盗難被害の2位はプリウス、1…

もう一人「古い戦友」からの贈物

昨年、NTTグループのCISOであり、サイバーセキュリティ業界の「戦友」でもある横浜信一氏から贈られた書「サイバーセキュリティ戦記」をご紹介(*1)した。今年になって、もう一人古い「戦友」から「テックラッシュ戦記」という書(*2)をいただいた。NTTグ…

デジタル社会はエネルギー革命を求む

先ごろの<ダボス会議>では、OpenAI社のサム・アルトマンCEOが「AIには原子力(発電)が必要」と発言した。AIの優秀性は知られているが、結果を導き出すにあたっては大量の電力を必要とする。脳の消費エネルギーに対して、現状の技術では数ケタ上のエネルギ…

共同システムのオープン化は朗報だが

私は現役時代、銀行システムに携わっていたことが10余年ある。開発や保守ではなく、どうしたら業務をデジタル化して改善するかという仕事(現在でいうならDX企画)だった。そのため銀行業務の現場を取材したし、当時の「金融Big-Bang」の潮流も勉強した。そ…

TikTokとサブリミナル

中国と(政治的に)距離をとる国で、中国企業バイトダンスのサービス<TikTok>禁止の動きが広まっている。ただ支持率低迷に悩み、秋に大統領選挙を控えるバイデン政権は、若者に多い利用者の反発を恐れて全面禁止の措置には及び腰だともいう。 各国で続く政…