梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

量子コンピュータのキラーアプリ

 急激な技術発展をしていると思われるデジタル分野だが、大きな飛躍をもたらす新技術が普及するには「その技術でなくてはならないキラーアプリ」が必要である。例えば第五世代通信技術(5G)は、技術の確立は10余年前だが、ローカル5Gはそこそこ使われているものの、広域5Gのキラーアプリはまだ本命が産まれていない(*1)。

 

 今HOTな技術であるAIも、汎用性の高い<生成AI>の登場までは、何に使えるか試行錯誤が続いていた。量子コンピュータ(QC)も、研究は進んでいたのだが「従来のコンピュータとはケタの違う計算能力」をどこで活かせばいいか、経済合理性が発揮できる分野はどこかが課題だった。

 

    

 

 もちろん、安全保障分野ならば「カネに糸目は付けない」傾向があるので、政府の支援で開発は進めることができる。しかし軍事用途のみでは<普及>とは言えないだろう。QC関連の記事は、やはりキラーアプリについて情報がないかの視点でずっと見てきた。すると、

 

伊藤忠テクノ、量子計算機で配送ルート最適化 人手不足に対策 - 日本経済新聞

 

 労働条件規制が昨年から強まった物流業界で、QCの計算速度が活かせるとの報道である。まだ小さなアプリ分野だが、経済合理性があるなら一つの成果だ。

 

量子コンピューティング革命が間近に迫っている…準備を始めていないCEOは「手遅れになる」 | Business Insider Japan

 

 という報道もあって、当面既存コンピュータ×AIとQCがハイブリッドになると予測している。これは少し先走りしすぎのような気もするが・・・。ただQC時代が近いと思わせることは、他にもある。私の所属するシンクタンクでは毎週会員企業向けに海外のサイバーセキュリティ関連報道をピックアップしているが、昨年度の傾向を4つに集約したところ「耐量子暗号移行の目途」が入った(*2)のだ。

 

 QCを使うと、従来型の暗号を解くのが容易になる。そんな時代が近いから、QCでも解きにくい暗号の開発や試行・適用に関する情報が増えている。あえて「QCの光と影」とは言わないが、普及を見越した影響と対策も同時並行で検討する必要があるのだ。

 

*1:建設業DXと5G - 梶浦敏範【公式】ブログ

*2:NewsClip-FY2024.pdf