梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

脅威インテリジェンス入門(2)

もちろん、脅威インテリジェンスを導入して成果を挙げている企業は多い。以前、一般企業のIT予算は年商の1~3%だが、金融機関では5%を越えることもあると紹介した。ほぼ「情報産業」といってもいい金融機関にとっては、ITの停止は最大リスクである。当…

脅威インテリジェンス入門(1)

サイバーセキュリティの世界では、攻撃側が絶対的に有利である。技量が同じレベルであっても、防御側は365日/24時間、あらゆるものを護らなくてはいけないのに、攻撃側は自由にいつどこを攻撃するかを決められるからだ。 そこで重要になってくるのが「脅威…

業務委託先というサイバーリスク

今年5月、多くの金融機関や地方公共団体などから業務委託を受けている情報処理サービス企業イセトーがランサムウェア攻撃を受け、大量の委託先から預かっていたデータが暗号化されたり窃取されるという事件が起きた。身代金要求があったか、支払ったのかな…

国民審査のための情報開示

次の週末は、石破政権の評価を国民が下す総選挙。TV局は毎日のように特番を組み、各党党首・幹部が出演している。新聞も世論調査など駆使して、状況分析に余念がない。ある意味、情報は市民が受け取り切れないほどあふれている。 しかし、同時に実施される最…

<TikTok>の弊害と適用範囲拡大

今年4月に米国連邦議会は<TikTok>の親会社バイトダンスに対し、米国企業に売却しなければサービスを停止させるとする法律を可決している。バイトダンスは売却に応じておらず推移が注目されていたが、今月もうひとつの打撃が与えられた。それは、13州とワ…

ハリケーン災害に乗じた偽情報

米国のフロリダ半島周辺は、ハリケーンのメッカである。日本の台風も巨大化しているが、ここに襲来するハリケーンの激しさは日本の比ではない。暴風・豪雨・洪水が街を吹き飛ばし、飲み込んでいく。それが2つ連続でやってきて、現地は大混乱だ。 2週間後は…

冤罪・裁判員・デジタル証跡

難しい裁判で科学的な証拠を見せられ、素人の裁判員は戸惑ってしまう・・・。指紋鑑定くらいなら見た目で分かるが、DNAだとどうかな?ましてやサイバー犯罪でのデジタルフォレンジック(証跡)を示されても困るのではないか?そんな思いをしたのは、今月やたら…

コンテンツ省の提案・・・その前に

経団連が石破内閣に最優先の政策テーマとして申し入れたのは、法人税減税でも円安是正でもなく、コンテンツ産業の育成だった。 経団連「コンテンツ省」の設置提言 予算2000億円に - 日本経済新聞 (nikkei.com) この考え自体は悪いことではない。「コンテンツ…

ECサイト運営事業者の責務

ランサムウェアのように事業継続に直接影響しないからか、あまり大きな報道にならないが、ペイメントアプリケーションの改ざんによる個人情報窃取が頻発している。直近でも、 ・全漁連のJFお魚マルシェ ・菓子店東京玉子本舗 ・サッカーチームの東京ヴェルデ…

<X>なき社会の実験は・・・

昨日に引き続き、イーロン・マスク氏がらみの話題をもう一つ。SNS上で明らかな偽情報や誹謗中傷、さらには犯罪指令などが飛び交っているのは事実で、プラットフォーマーには<コンテンツ・モデレーション>という管理が求められている。管理といっても、場合…

企業価値の問題ではないから・・・危険

今月末には、石破政権の行方を占う総選挙の投開票がある。それから1週間もたたないうちに、世界が注目する米国大統領選挙だ。今年はまれに見る選挙イヤーで、欧州もインドも揺れ動いた。そうそう、ロシアでも大統領選挙があった。 正しく民意を汲むというの…

カフェというセキュリティホール

先月まだ暑さが厳しい中、ホテルのチェックインまで15分ほどあったので、ホテルに隣接した<エクセルシオール・カフェ>に入った。企業訪問の前に、仲間と待ち合わせでコーヒーショップを利用したことはあるが、一人で入るのは何十年ぶりだろうか? 大きなテ…

知事のAI規制法案拒否に関する報道

先月末、米国カリフォルニア州のニューサム知事は、議会が可決したAI規制法案への署名を拒否した。欧州では「AI Act」が成立し、禁止されるAI、監督が必要なハイリスクAIなどの規制が始まっている。米国ではカリフォルニア州が、最初にこの問題に取り組んで…

「政治的資本主義」からは逃れられず

リーマンショックの時は4兆元もの資金拠出そして世界経済を支えた中国だが、今は世界恐慌の発信源になるかもしれないリスクを抱えている。かといって、人民元の大量増刷も難しい(*1)と言われている。富裕層は米国等に脱出・逃避を図り、その一部は日本で…

日本の半導体産業復活のため

業界の大先輩から「日本半導体物語~パイオニアの証言」という新刊書を送っていただいた。あしかけ70年の半導体開発史(*1)である。 ・ラジオを小型化したトランジスタ ・ICBMの射程を延ばした集積回路(IC) ・電卓を小型化、低価格化したLSI ・コンピュー…

時代に取り残されない製造業

昨日「DATA Driven Economy」時代に乗り遅れた、製造業界の話を紹介した。ではこの時代に合わせた製造業とは何かという事例で、典型的なものが記事になっていた。 日立、AI活用で鉄道インフラ保守を効率化 エヌビディアと協業 | ロイター (reuters.com) 「…

時代に取り残される製造業

かつて、IBM社のことを「いつまでもBusiness Machine」と揶揄した日本の業界人がいた。コンピュータの未来が(PCなどの登場によって)大きな広がりを見せているのに、営業戦略としてビジネス機器を得ることに軸足を置いているとの意味だ。もちろん今のIBM社…

米国のConnected Car規制案

インターネットにつながる様々な機器のリスクについて、再三申し上げてきた。以前からリスクはあったが、今年はそれに関する報道が目立つ。洗濯機が大量のデータ転送をしていた話(*1)などは、何に使われているかわからず気味が悪い。 今月には、武装組織ヒ…

株主そのものの体質改善

3年に及んだ岸田政権も今月で終わる。防衛費増、G7サミット、異次元の少子化対策、派閥解消など多くのエピソード(功績)があった。ただ当初掲げた「令和の所得倍増計画」は「金融所得倍増」にすり替わってしまった。もちろん、金融所得だって増えればうれ…

犯罪集団に資産凍結の制裁

正直「ようやくやってくれたか」との思いだ。2016年にバングラデッシュ中央銀行からSWIFT経由の不正送金があり、1億ドル以上が窃取された。北朝鮮の犯行と言われ、金融関係者には衝撃が走った。それ以降も、北朝鮮の犯罪集団による仮想通貨(暗号資産)の窃…

DX時代からAI時代への雇用変容

最終盤を迎えた、自民党総裁選挙。候補者が多い分数多くの政策が論じられるのはいいことだが、どうしても焦点が絞れず散漫になる恨みも残る。その中である候補者が「解雇規制の見直し」に言及して、論議を呼んでいる。「副業を認める社会」という主張もある…

サイバートラックに出来るなら

「誰もバイデンとカマラを暗殺しようとしない」などと、自らのSNS<X>に投稿(*1)し、大統領警護隊から「脅迫に当たらないか」との容疑で捜査されるなど、お騒がせが止まないイーロン・マスク氏だが、本業は何だったかというと、一つにはEVメーカー<テス…

遠隔爆破による対個人テロ

誰がやったのかについては、まだ分かっていない。しかしなぜ、ははっきりしている。レバノン拠点の武装勢力ヒズボラの勢力を削ごうとする、対個人テロである。大規模な暗殺行為と言ってもいい。 レバノン連日の爆発、20人死亡 「日本製の無線機」、450…

TOP Secret が漏れていたかも

安全保障上の機密を民間人まで含めて護るための「セキュリティ・クリアランス制度」が日本でも導入される。先の通常国会で成立した関連法案の担当大臣は、今自民党総裁選を戦っているお二人(小林鷹之・高市早苗)である。 この制度はどんなものか、3年ほど…

2つの資本主義、日本はどこへ?

米国大統領選挙の記事が少なくなるほど、自民党総裁選・立憲民主党代表選の話題がメディアを席巻している。各候補者から、外交・安保、社会福祉、天皇家、原子力・環境、税負担などの政策が語られている。党内でも相互に批判していることもあり、活発な政策…

ファクトチェックのコスト負担

米国大統領選挙で最大のイベントだった、ハリス対トランプのTV討論会が終わった。総じてメディアの評価は「ハリス副大統領の判定勝ち」だが、実況中のXアカウントではトランプ擁護派の意見が多かったという。例によってトランプ前大統領は嘘を重ね、司会に…

選択的夫婦別姓議論の背景

自民党総裁候補、小泉進次郎氏のキャッチフレーズは「決着」なのだそうだ。その中でも、 ・1年以内に法案を出す ・ただし党議拘束はかけない とかなり具体的な提案をした政策が、選択的夫婦別姓問題。その推進を求める経団連に、推進して決着させると約束し…

意外にあっさり「改善に努める」と・・・

先月、フランスの空港でSNS<テレグラム>創業者パヴェル・ドゥロフが逮捕された。日本ではあまり馴染みのないSNSだが、1対1の秘話(*1)ができたり一定期間でメッセージが消えるなど、犯罪にはもってこいの仕様。ディープフェイクポルノ、児童ポルノ、麻…

堺屋思想の原点に立ち返って!

せっかく自民党が失点を重ね、立憲民主党も党内がゴタついているのに、野党第二党日本維新の会が冴えない。この人だけが悪いわけではないが、馬場代表体制になってからダッチロール気味だ。 ・不祥事を起こす国会議員や地方首長 ・第二自民党でいいとの発言 …

知的部門の米中デカップリング

何度か「複雑に絡み合ったサプライチェーンがあり、米中デカップリングなど不可能」と申し上げてきた。しかしいくつかの分野で、それは少しずつだが進行している。ヒト・モノ・カネ・情報について、 ・ヒト 欧州からのフライトが減るなど、少しだけ減ってい…