梶浦敏範【公式】ブログ

デジタル社会の健全な発展を目指す研究者です。AI、DX、データ活用、セキュリティなどの国際事情、今後の見通しや懸念をお伝えします。あくまで個人の見解であり、所属する団体等の意見ではないことをお断りしておきます。

AI課税の対象となるのは・・・

昨日に続いてAI関連の話題。AI活用は、ホワイトカラー層の雇用を奪うとされる。ゴールドマン・サックスのトレーダーが、AI導入で600⇒2名になったのがその典型例。放置すればごく一部のAIを駆使できる人と、その他の人の格差が広がると懸念されている。そこ…

生成AI活用現場のリスク

昨年<Open AI社>の生成AI「Chat-GPT4.0」が登場して、一気にAIブームが巻き起こった。あれから1年近く経ち、そろそろ実際に業務に使われるようになって、いくつかの冷静な知見がたまってきたころだと思う。今回、AIのリスク管理を看板にしているベンチャ…

「TikTok」の目に見えるリスク

昨日に続いて、米国の「TikTok」規制のお話。トランプ候補の擁護発言(*1)にもかかわらず、下院では、中国系企業「バイトダンス」に半年以内の売却を命じる規制法案が、352対65の圧倒的多数で可決成立した。まだ上院でどうなるかは分からないが、可決されれ…

他に候補者はいないのですか?

今年は米国の4年に一度の大統領選挙の年だ。通常お祭り騒ぎが年初から、スーパーチューズデーで中間盛り上がりをし、11月の本選挙に向けて広がっていく。しかし、今回は両党とも候補者が決定的になり、当面話題がない。だから人気があるとはいえ、政治家で…

外務省は経済官庁

もう20年以上前のことになるが、ある業界団体の会合に外務省審議官がやってきて時事国際情勢について講演した後の懇談で「産業界のみなさんには知られていないが、実は外務省は(経産省などと同様)経済官庁なのです」と言った。正直驚いて、いろいろ質問し…

古くて新しい問題「内部不正」

昨年後半から、サイバーセキュリティ業界でも「内部不正対策」の議論が聞かれるようになった。同業他社に転職する際に機密情報/顧客情報を持ち出したという案件もあったし、通信キャリアで派遣社員が長期にわたって1,000万件ほどの顧客情報を持ち出した事件…

産業競争力か?安全保障か?

次世代の計算機技術として、期待されているのが<量子コンピュータ>。後述するように計算の単位<Qビット>は純粋にデジタルとは言えないので、デジタル技術の革新とは言いづらい。その入門編的な解説は、下記の書が適当だと思う。 第三次計算機革命 - 新…

「Open WiFi」はやはり危険

サイバー攻撃による情報窃取が頻発していることは周知だが、このところ攻撃側からの情報暴露が目立つ。例えば上海のIT企業「安洵信息有限公司」が、フランスやインドなどにサイバー攻撃を仕掛けたとする内部資料が、インターネット上に流出している。それに…

半導体産業囲い込みの動きか?

先月、半導体ファウンダリ大手のTSMC熊本工場が稼働し始めた。まだ震災から復興途上である熊本県にとっては、地場産業の拡大に向けた朗報である。さらに、第二工場の建設も決まっているという。熊本TSMCだけでなく、このところ関連事業所の新増設が相次いで…

スタートアップ優遇にならず(後編)

「デジタル庁」発足から3年ほどになるが、彼らの努力は買うとしても、前編で述べたようなリテラシーを中央官庁が得るには、10年ほどの時間がかかると思う。さらに、行政機関特有の問題点もある。 民間・民間の取引では、資本主義の原則に従って商談を進める…

スタートアップ優遇にならず(前編)

中央省庁のシステム開発・運用は、かつては<国策SIer>に任せるのが普通だった。それは洋の東西を問わず、英国でもその傾向はあって、国策企業ICLに英国政府システムは多くの発注が流れた。ICLが経営不振に陥った後は、同じIBM互換機メーカーだった富士通が…

AUKUSへの技術参画

国内では非難の声が高い岸田政権だが、外交・安全保障面では着実に成果を挙げていると思う。今回、インド太平洋安全保障枠組みであるAUKUS(*1)に、限定的な技術参画ではあるものの、日本が連携できる可能性が出てきた。 AUKUS、日本と防衛技術協力を検討 …

台湾総統選挙前後の中国

先週の米国(分断)事情に引き続き、今週は中国の政治・外交に詳しい人に話を聞く機会があった。先月の台湾総統選挙は、中国が種々の方法で介入してくるだろうと思われていたが、結果は総統選は与党民進党が勝ったが、議会選挙では与党は第一党にはなれなか…

港湾関連企業でのサイバーリスク

昨年7月、名古屋港施設がサイバー攻撃を受け、港湾機能を一時喪失したことは、記憶に新しい。日本政府は、経済安全保障推進法の基幹インフラとして「物流」などは指定していたが、今年になって「港湾」も加える(*1)ことにした。日本経済は輸出入に多くを…

デジタル貿易自由化への逆風

私のデジタル技術者としての会社人生、後半は「Global & Digital」を推進する政策活動が中心となった。国ごとに違う規則と、国境が存在しないサイバー空間の矛盾を、少しでも緩和できるよう、各国政府に働きかけたものだ。TPPの電子商取引章に、 ・国境を渡…

NVIDIA・・・やはり製造業ではない

先週、日経平均株価が34年ぶりの高値を付けた。世界経済が好調とはいえず、種々の懸念の中でインフレは収まらない。いやな雰囲気なのに、株式市場は(米国含めて)好調だ。そのけん引役と言われるのがデジタル産業、特に今回は半導体産業のNVIDIAの好決算が…

半導体関連企業は守らないの?

「もしトラ」の続報である。先週米国事情に詳しい有識者から種々教えてもらい「予測不能なトランプ政権への対処法を考えなくては」という気になった。とにかく自国産業を守り、雇用を守るスタンスだから、今月紹介した日本製鉄のUSスチール買収など論外(*1…

沖縄のハコモノ行政、変わらず

今月、家内と4年ぶりの沖縄旅行に出かけた。春節と日本の三連休が重なって、とても混みあう時期だった。往復のフライトも満席、コンドミニアムの予約も希望のところはとれなかった。空港でも、街中でも、モノレールの中でも、外国人の会話が目立つ。南国か…

バイデン対トランプ、見通しは五分五分

米国事情に詳しい人に、米国政治状況の現状分析を聞く機会があった。「もしトラ」とか「ほぼトラ」という状況の中で、今後どうなっていくのか、我々はその事態にどう備えるべきかを考える貴重な機会である。 今年の大統領選挙もそうだが、前々回2016年の選挙…

「いずれにせよ国民負担です」

自民党の裏金問題が「政治とカネ」論議に火をつけ、予算委員会では政倫審・連座制・政策活動費などなど国会議員周りのQ&Aがほとんどの時間を占めている。どれも自民党としては呑みづらいことで、岸田総理らの回答は歯切れが悪い。「こんなことは早く政倫審に…

ブレるバイデン大統領の危うさ

「もしトラ」や「いまトラ」という現象に、世界は息を呑んで行方を見守っている。最大の問題はトランプ候補の予測不能性であって、世界秩序や常識の崩壊すら思わせる。そんな候補がなぜ強いのかと考えると、結局現職バイデン大統領が弱いからだということに…

いわゆる「ベンダー・ロックイン」ですね

先月、英国に出張していた時、富士通の子会社(旧ICL)の幹部が議会公聴会に呼び出された。700名にもおよぶ郵便局長・従業員に。ポストオフィスが公金横領の冤罪を着せたとされる事件。今年の正月TV特番で連日放映され、大きな社会問題になっていたのだ。そ…

自動運転の産みの苦しみ

新しい技術が開発され、実用化され、普及していく過程においてはいくつものハードルがある。リソースの規模として、私の実感は、 ・基礎的な技術を固め、なんとか利用できそうなものを完成させる開発 1 ・使ってもらって不具合がないように、安全措置などを…

ハイテク自動車盗とMaaS安全対策

昨年の車両盗難件数が公表されて、被害の第一位はランドクルーザー(450件)だという。以下、プリウス(282件)、アルファード(184件)となっていて、この3年間被害上位10車種が、いずれもトヨタ&レクサスなのだという。 車両盗難被害の2位はプリウス、1…

「もしトラ」「いまトラ」の経済政策

「もしもトランプが返り咲いたら」が議論されているが、「いまもうすでにトランプの影響が政策に出てくる」になっているとも伝えられる。その影響とは、例えばウクライナ支援と対移民強硬策を抱き合わせにした予算案にトランプ候補が反対していることから、…

今でも「鉄は国家」なのか?

19世紀ドイツの有名な政治家ビスマルクは「国家は血なり、鉄なり」と語り、鉄血宰相と呼ばれた。近代国家(Society3.0:工業化社会)を形成するには、より良質の鉄鋼生産能力増強が必要だった。 日本でも官営八幡製鉄所の開業(1901年)にあたって、初代首相…

巨大ITの決算、株価&AI

先週、巨大ITと称せられる5社の2023年10~12月期の決算発表(*1)があった。各社増収、増益で、日経紙は「巨大IT再点火」と見出しを付けていた。改めて、アマゾンの売上高約1,700億ドル(前年同期比14%増)というのはとんでもない値だと思う。年間に直せば…

もう一人「古い戦友」からの贈物

昨年、NTTグループのCISOであり、サイバーセキュリティ業界の「戦友」でもある横浜信一氏から贈られた書「サイバーセキュリティ戦記」をご紹介(*1)した。今年になって、もう一人古い「戦友」から「テックラッシュ戦記」という書(*2)をいただいた。NTTグ…

重要経済安保情報の扱い

何度かこのブログでも取り上げてきたセキュリティ・クリアランス(SC)制度の法整備が、ようやく進みそうだ。自民党裏金問題の追及に明け暮れる事態で、能動的サイバー防御(ACD)の法案も通常国会では見送られる(*1)と言われ、SCの法整備も難しいかと思っ…

幼児教育は、言葉をたっぷり

AIの先端研究者のインタビュー番組をいくつか見た。参考になったのは、次のようなフレーズ。 ・Chat-GPTに代表される生成AIの基本は、大規模言語モデルである ・単純に言うと、言語の列を見て、次の言葉(単語)を予測するもの ・それまでのAIは、言語の列(…